2002-09-01から1ヶ月間の記事一覧

勢古浩爾「「自分の力」を信じる思想」

PHP新書2001年9月28日初版 思想・生き方の一階部分・二階部分という発想が面白かったので、その関係のみ書いてみる。 われわれが通常生きている生活・感情の世界が一階部分である。われわれはそこのみで完全に生きていくことができる。われわれの…

村上龍「恋愛の格差」

青春出版社 2002年10月10日初版 「SAY」という女性向きの雑誌に連載した文章を集めたもの。こういうタイトルになっているが恋愛の話などあまりでてこなくて、構造改革とか日本の社会格差の拡大とかいうことがもっぱら書かれている。それがなぜ恋…

渡部昇一「ハイエク マルクス主義を殺した哲人」

PHP研究所 1999年2月12日初版 渡部昇一が座長をつとめた「ハイエクを読む勉強会」での、ハイエク『隷属への道』への渡部の私見をまとめたもの。 その勉強会のメンバーに若手政治家、実業家、編集者にまじってキャリア官僚がはいっているのがご愛嬌…

木田元「マッハとニーチェ 世紀転換期思想史」

新書館 2002年2月5日初版 物理学者のマッハと哲学者ニーチェが、世紀末ウイーンの文学者、例えばホフマンスタール、あるいは「特性のない男」の、ムジール、さらにはフランスのヴァレリーなどに大きな影響をあたえたことを梃子に、マッハとニーチェの…

春日武彦「17歳という病 その鬱屈と精神病理」

文春新書 2002年8月20日初版 現在52〜53歳くらいの精神科の医者が書いた若者論であるが、若者は理解できないというトーンに貫かれた、そして現在の若者よりも、自分の若いときのことにページの多くを割いている変わった本である。 自分も若いとき…

村上春樹「海辺のカフカ」 

新潮社 2002年9月10日初版 「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」「ねじまき鳥クロニクル」の系列につらなるメタファーに充ちた長編小説。ギリシャ神話からUFOさらには生霊までなんでもありの世界をとにかく読ませてしまう作者の力量は大…

加藤典洋 橋爪大三郎 竹田青嗣 「天皇の戦争責任」

径書房 2000年11月5日初版 昭和天皇の戦争責任を巡る3者の鼎談。500ページを超える大著。加藤典洋が有責論、橋爪大三郎が無責論を主張し、竹田青嗣が行司兼進行係をつとめる形で進行する。 加藤、橋爪の議論は、竹田が終りのほうではからずも言っ…

岡本嗣郎「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」

集英社 2002年5月7日初版 新渡戸稲造と津田梅子の弟子であり、恵泉女学園を創始した女性である河井道と、マッカーサーの部下であり、アメリカの占領政策とくに天皇の処遇の方策について大きな影響をもった人物であるバナー・フェラーズについてのノン…

佐々木邦「心の歴史」

みすず書房 2002年7月24日初版 佐々木邦の名前をはじめて知ったのは、渡部昇一の何かの随筆でだったと思う。機会があったら読んでみたいと思っていたが、このたび、みすず書房の「大人の本棚」シリーズの一冊として、長編「心の歴史」が収載されたの…

ジョン・ダワー「敗北を抱きしめて 第二次大戦後の日本」 

岩波書店 2001年5月30日初版 占領時代の日本を論じた本。 連合国との戦争は3年8ケ月であるが、占領期間は6年と8ケ月におよぶ。占領期間は戦争期間のほぼ倍であり、日本のその後に多大な影響をおよぼした。 占領時代の前後のことを考えるためには…