2005-02-01から1ヶ月間の記事一覧

G・ライル「ジレンマ 日常言語の哲学」

[勁草書房 1997年8月30日初版] 山本貴光らの「心脳問題」に紹介されているのをみて、読んでみようと思った。 平易な言葉で書かれているが、哲学の書であって内容は決して平易ではない。哲学音痴のわたくしとしては、理解できない部分が多かった。した…

池澤夏樹 「世界文学を読みほどく スタンダールからピンチョンまで」

[新潮選書 2005年1月15日初版] 池澤夏樹が2003年9月に京都大学文学部でおこなった夏季特殊講義の講義録である。一週間、午前・午後各一コマづつの計14コマ。総論2コマ、総括1コマ。あと世界の小説を一コマづつで論じて計10編、あとは自作…

玄田有史 「14歳からの仕事道」

[理論社 2005年1月20日初版] 中学前後の若者を対象に仕事について語りかける本。そういうものをいまさら何で読んでいるんだということはあるが。 玄田氏は「仕事のなかの曖昧な不安」において、いわゆるフリーター問題をとりあげ、この問題が若者の就…

山本貴光 吉川浩満 「心脳問題 「脳の世紀」を生き抜く」

[朝日出版社 2004年6月9日初版] 去年買って読まずに抛ってあったのだが、最近脳関係の本を読んでいるので、思い出して読んでみた。問題状況を整理把握するのに大変有意義な本であった。 著者らは、哲学・脳科学の専門家ではなく、他の仕事をしながらア…

P・ゲイ「モーツァルト」

[岩波書店 2002年6月27日 初版] ペンギン評伝双書の一冊。特に変わったことが述べられているわけではない。過度に偶像崇拝的になることもなく、作曲家としては天才、人間としては普通の人間であったモツアルトの生涯について論じていく。強いていえば…

吉本隆明 「超恋愛論」 

[大和書房 2004年9月15日初版] まあ、恋愛について論じた本です(笑)。で、恋愛というのは「細胞と細胞が呼び合うような、遺伝子と遺伝子が似ているような−−そんな感覚だけを頼りにして男と女がむすばれ合う」ものなんだそうです。なにしろ、それは…

内田樹 平川克美 「東京ファイティングキッズ」

[柏書房 2004年10月12日初版] 内田樹とその小学校以来の友人であり、ヴェンチャー企業?の社長である平川氏の往復書簡(インターネット上での公開されたやりとり?)をおさめたもの。平川氏がそういう人間であるので、現代日本で働くことについてが…

前野隆司 「脳はなぜ「心」を作ったのか 「私」の謎を解く受動意識仮説」

[筑摩書房 2004年11月15日初版] 著者は主としてロボット工学の分野の研究者のようで、触覚とはどのようなもので、つるつるした感じとざらざらした感じをどうやって見分けることができるかといったようなことを研究してきた人らしい。それがあるとき…

下條信輔 「〈意識〉とは何だろうか 脳の来歴、知覚の錯誤」

「講談社現代選書 1999年2月20日初版] 著者の「視覚の冒険」が面白かったので読んでみた。以下、議論をたどっていく。 生物は、秩序や因果を発見しようとする認知傾向をもつ。それを見落とすことが生存にとって致命的であるような環境で生きてきたか…

渡辺哲夫 二〇世紀精神病理学史 病者の光学で見る二〇世紀思想史の一局面

[ちくま学芸文庫 2005年1月10日初版] 本屋で偶然みつけた本であるが、実に奇妙な本である。渡辺氏は現役の精神科医であるようなのだが、氏がどのような日常臨床をやっているのか見当もつかない。わたくしには著者は誇大妄想のパラノイアであるとしか…

P・ゲイ 「神なきユダヤ人 ーフロイト 無神論 精神分析の誕生]

[みすず書房 1992年12月24日初版] 本書は、不信仰者であったフロイトが、宗教に対して示した態度につき論じたものである。 フロイトは、社会の上層階級に科学的なものの考えた方が強まったことにより、宗教の影響力が次第に弱まってきたと考えた。わ…

P・ゲイ 「シュニッツラーの世紀 中流階級の成立 1815-1914」

[岩波書店 2004年11月26日初版] 毎日新聞の書評で紹介されていたもの。吉田健一が「ヨオロツパの世紀末」で18世紀の優雅と対照させて徹底的に卑俗なものとして描いたヨーロッパ19世紀のブルジョアについて論じた浩瀚な本である。 そのブルジョア…