2005-04-01から1ヶ月間の記事一覧

上野修「スピノザの世界 神あるいは自然」

[講談社現代選書2005年4月20日初版] スピノザは前から気になっていた思想家である。いろいろな人のいろいろな本を読んでいると随所でスピノザの名前にであう。それも全然思想傾向が違うひとの著作においてなのであるから、これは絶対に大事な思想家で…

中井久夫「時のしずく」 

[みすず書房 2005年4月20日初版] 中井久夫の第四エッセイ集。須賀敦子や神谷美恵子を論じた文、あるいは早逝した門下生である安克昌を悼む文なども素晴らしいが、ここでは「親密性と安全性と家計の共有と」と題された家族を論じた文章をとりあげたい…

町田康 「告白」

[中央公論新社 2005年3月25日初版] 明治26年に実際にあった「河内十人斬り」に材をとった小説であるが、その事件を再現しようとしたものではまったくない。「パンク侍・・・」が別に時代小説を書こうとしたものではなかったのと同じで、その事件は…

雑誌「考える人」2005年春号 特集「クラシック音楽と本さえあれば」(新潮社)

雑誌「考える人」は創刊以来、一応買い揃えるようにしている。その最新号が面白かったので、単行本ではないが、とりあげてみることにする。 この号の特集は「クラシック音楽と本さえあれば」である。そこに「わたしのベスト・クラシックCD」という、いろい…

村上春樹 「ふしぎな図書館」

[講談社 2005年1月31日初版] 佐々木マキの挿絵がたくさん入った絵本。童話というのかどうか? 読者として大人を意識したものなのかどうか? ロダーリの「ファンタジーの文法」で紹介されているプロップの民話の構造分析によれば、典型的な民話の構造…