2005-06-01から1ヶ月間の記事一覧

加藤典洋 「僕が批評家になったわけ」

[岩波書店 2005年5月20日] 批評ということについて、思いついたことを並列的にならべたような本。まあ徒然草スタイルというのだろうか。批評というテーマをめぐって起承転結的に一貫して論じた本ではない。 さて、加藤によればまず批評は学問ではない…

倉橋由美子追悼

倉橋由美子が死んだ。 新聞によれば死因は拡張型心筋症とあった。 大分前のエッセイに、ひどい耳鳴りがあってとても物書きができる状態ではないと書いていたし、そのまた前のエッセイに、腸の検査をしたら医者にあなたこれでよく生きてますねといわれたとか…

橘木俊詔 「企業福祉の終焉 格差の時代にどう対応すべきか」

[中公新書 2005年4月25日 初版] こういう本を読んでいるのは、わたくしが企業福祉の当事者である、すなわち、ある企業の病院に勤務している、という理由による。他人事のようないいかたであるが、わたくし自身そういう立場にいながら企業が福祉の一端…

R・ドーア 「働くということ グローバル化と労働の新しい意味」

[中公新書 2005年4月25日初版] 著者ドーアはイギリス生まれの社会学者。しばしば来日し、日本の状況についてもくわしい人らしい。本書は「ますますグローバル化する世界における労働の新しい形、新しい意味」と題して2003年にIOCに提出された…

江戸川乱歩 「青銅の魔人 少年探偵 五」

[ポプラ社2005年2月初版] 江戸川乱歩の少年探偵団ものは、わたしがはじめて熱中した書物である。小学校高学年に「少年探偵団」もの、中学校で「風と共に去りぬ」、高校で太宰治「津軽」、大学教養学部で吉行淳之介、医学部にきて福田恆在、それを経由し…

藤沢秀行 「野垂れ死に」

[新潮選書 2005年4月20日初版] わたくしは囲碁にはまったく関心がないが、藤沢秀行がとんでもないひとであるという噂はどこからともなくきいていた。これを読んだのは新聞で本書が紹介されていて、藤沢秀行が三つの悪性腫瘍の自然退縮を経験したと読…

ニーチェ 「キリスト教は邪教です! 適菜収訳 現代語訳『アンチクリスト』

[講談社+α新書 2005年4月20日初版] ニーチェに「キリスト教は邪教です!」なんて著書があるかということであるが、副題にあるように『アンチクリスト』の翻訳である。現代語訳というのがミソで、通常の翻訳ではない。シドニー・シャルダンなどの翻訳…