2006-09-01から1ヶ月間の記事一覧

 ⑰ 阿部謹也「世間とは何か」・その2

小阪氏の本を読んでいて疑問に思うのは、全共闘運動というものが偶然の産物だったのではないかという視点を欠くように見える点である。 その原点となったのが医学部の青年医師連合のインターン制度反対の運動であったのは衆知のことであるが、このインターン…

今日買った本

阿部謹也「「世間」への旅」 筑摩書房 2005年7月 中井久夫「樹をみつめて」 みすず書房 2006年9月 坪内祐三「考える人」 新潮社 2006年8月

 ⑯ 阿部謹也 「世間とは何か」・その1

阿部謹也氏の「世間とは何か」(講談社現代選書 1995年)の本文は以下のように始まっている。 今から十数年前のことである。女子学生の一人が、ゼミナールのコンパの席上で突然次のような質問をした。「先生、中年の男性ってどうしてあんなに汚らしいの…

 ⑮ 養老孟司 「運のつき」・その3

養老氏は、自分のことを普通だと思っている人間ほど危ないという。なぜなら自分を普通だと思う人間は、自分は変なことをしないと思っているからだ、と。その普通の自分が変だと思うことが世の中で起こっているなら、それは世の中が変であることになるから、…

 ⑭ 養老孟司 「運のつき」・その2

養老さんは、自分には《所を得ない》という感覚、《自分が「そこにいて当然だ」と思える居場所がない》いう感覚がある、それは《大げさにいうと「私なんかが生きてここにいて、そのためみなさまにご迷惑をおかけして、まことに相すみません」という感覚なん…

 ⑬ 養老孟司 「運のつき」・その1

「運のつき」(マガジンハウス 2004年)は養老さんの本としてはあまり売れなかったのではないかと思う。題名だけみても何について書いた本だかわからないし、内容は全共闘運動へのうらみつらみであるし。 全共闘運動へのうらみつらみといっても、相手は…

 ⑫ 高橋源一郎「ジョン・レノン対火星人」(文庫版)の内田樹の解説「過激派的外傷あるいは義人とその受難」

高橋源一郎「ジョン・レノン対火星人」(講談社文文芸文庫 2004年))に付された「過激派的外傷あるいは義人とその受難」という内田樹の解説はちょっと異様なもので、高橋源一郎と内田樹という、ともに1970年生まれの世代(東大入試がなかった時の大…

 ⑪ 福田恆存「解つてたまるか!」

福田恆存の戯曲「解つてたまるか!」(「解つてたまるか! 億萬長者夫人」所収 新潮社 1968年)は全共闘運動とはなんの関係もない。1968年2月に静岡県寸又峡温泉であった金嬉老事件を題材にしたものである。といっても題材にしているだけで、舞台を…

 ⑩ 実存主義的マルクス主義?

小阪氏の「思想としての全共闘世代」のp37に、その当時のマルクス主義は「実存主義的気分にひたったマルクス主義」であったということがいわれている。 マルクス主義は合理主義の系譜の中にあり、実存主義は非合理主義の流れの中になると思うので、それら…

 ⑨ 村上龍「希望の国のエクソダス」

加藤典洋氏の「小説の未来」(朝日新聞社 2004年1月)からそのまま引用すれば、「希望の国のエクソダス」は「中学生の一団が、「現代日本」の中で反乱を起こし、北海道に新しい「希望の国」を作る話」である。エクソダスだから、革命ではなくて、脱出で…

 ⑧ 庄司薫 「赤頭巾ちゃん気をつけて」

「赤頭巾ちゃん気をつけて」は1969年8月に刊行された。安田講堂事件で入試が中止になった年の大学受験生を主人公にしており、明白に全共闘運動を意識して書かれたものである。著者の庄司氏は東大法学部の丸山真男門下生らしいが、刊行当時これを読んだ…

 ⑦小室直樹「危機の構造」

小室直樹の「危機の構造」ははじめ1976年にダイヤモンド社から刊行された氏の処女作である。のちに中公文庫の収められた。わたくしのもっているのはその文庫版(1991年)であるが、それも現在絶版のようである。 本書をもって氏の最高の著作とするも…

今日買った本

トルストイ「戦争と平和 6」 岩波文庫 2006年9月 ゲーデル「不完全性定理」 岩波文庫 2006年9月 B・ブライソン「人類が知っていることすべての短い歴史」 NHK出版 2006年3月 山田昌弘「新平等社会 「希望格差」を超えて」 文藝春秋 20…

 ⑥ 「討論 三島由紀夫 vs. 東大全共闘」

小阪氏の本によれば、小阪氏は69年に東大焚祭委員会という組織をつくったのだそうである(焚祭は「フンサイ」とも読むのだそうである。つまらない洒落である)。しばらくして小阪氏はそこからも離れていったようであるが、その委員会を継いだ友人の木村修…

 ⑤ 橋本治「ぼくたちの近代史」

橋本治の「ぼくたちの近代史」(河出文庫 1992年 単行本 主婦の友社 1988年)は1987年におこなわれた講演を本にしたもの。3部にわかれ、全6時間というとんでもない講演で、その第一部はほとんど全共闘問題だけが論じられている。いままでいく…

 ④ 社会主義

1991年、あっというまにソヴィエト連邦が消滅してしまったときには本当に驚いた。信じられない思いだった。1989年のベルリンの壁の崩壊にもびっくりしたけれども、東側の体制というのがこんなにあっけなく崩れてしまうというようなことは予想だにし…

 ③革命

本書のあちこちに「革命」という言葉が見られる。それも気軽にというか、いたって無造作に使われている。この「革命」という言葉の意味がわからない。 「革命」というのは、通常は暴力的手段で権力を奪取することを指すものと思われる。しかし、そういう使い…

今日買った本

カント「永遠平和のために/啓蒙とは何か」 光文社古典新訳文庫 2006年9月 ロダーリ「猫とともに去りぬ」 光文社古典新訳文庫 2006年9月 バタイユ「マダム・エドワルダ/目玉の話」 光文社古典新訳文庫 2006年9月 ケストナー「飛ぶ教室」 光…

 ② 知識人

実は、この本のタイトルの意味がわからない。「思想としての全共闘」世代なのか、思想としての「全共闘世代」なのか。いくらなんでも世代が思想であるなどということはありえないから、《全共闘運動が提示した思想を経験した世代》というようなことがいいた…

 ①はじめに

小阪修平氏の「思想としての全共闘世代」(ちくま新書 2006年8月10日初版)を読んだ。小阪氏はわたくしと同じ1947年生まれであるが、本書の記事からすると、遅生まれのようであって、早生まれのわたくしより学年としては一年下のように思える。し…

今日買った本

A・チェーホフ 「チェーホフ・ユモレスカ」 新潮社 2006年7月