2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

池田信夫 与那覇潤 「長い江戸時代のおわり 「まぐれあたりの平和」を失う日本の未来」(1) (ビジネス社 2022年8月)

与那覇氏の本は以前「中国化する日本」を読んだことがあるが、いま一つ論旨が掴めない本だった。池田氏の名前はどこかできいたことがあるなと思ったが、「アゴラ」というネット上でいろいろなことを論ずる場を主宰している方だった。 割合最近ここでとりあげ…

関川夏央「ドキュメント よい病院とはなにか 病むことと老いること」(小学館 1992年 講談社文庫 1995)

このところ、緩和医療やホスピスに従事する医師の著作をとりあげ、少し辛口なことや悪口?のようなことを書いた。そうしているうちに、関川さんの「よい病院とはなにか」にも緩和医療をしている病院を取り上げたところがあったことを思い出した。 この「よい…

Roald Dahl 「 Matilda」その他

20日くらい前の記事で、Dylan Thomas の「あの快い夜へおとなしく入っていってはいけない」に言及した。 その時、そういえばダールの「マチルダ」にもトマスの詩が引用されているところがあったなと思い出した。何となく「Poem in October」と思っていたの…

(池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (7 終り)

この3冊本の最後は副題が「理想なき左派の混迷 1972-2022」である。 「はじめに」で池上氏は、この頃ベトナム戦争でアメリカは苦戦し、世界各地でベトナム戦争反対の運動が燃え盛っていた。これを人によっては「革命の日」が近いと受け取ったかも…

(池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (6)

p211から「過激化する新左翼」の章になる。 p223に佐藤氏が「新左翼の活動が一線を越えた、ある意味で荒唐無稽とも言える先鋭化をしていった」のは「京大全共闘の滝田修の思想にあったと考える」としている。「滝田は、革命のためには既存党派とは別…

池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (5)

「激動」p121から東大闘争が論じられていく。1月10日に「東大七学部学生集会が開かれ、大学側と学生側の間で「確認書」がとりかわされ各学部のストは次々に解除されていった。大部分の学生たちは授業が半年以上ないという事態にほとほと嫌気がさして…

胃癌リンパ節の拡大郭清

昨日、 近藤誠氏のことを書いていて、わたくしの現役のころさかんにいわれていた胃癌リンパ節の拡大郭清のことを思い出した。胃癌に限らず、腫瘍は周囲のリンパ節に転移をおこしていくわけで、もちろん周囲のリンパ節→もう少し遠いリンパ節→さらに遠いリンパ…

近藤誠さん

近藤誠さんがなくなったらしい。 近藤さんほど医者仲間から嫌われていた医師はあまりいないのではないかと思う。何だか変なことをいっている医者というのはいくらでもいるがが、近藤氏は過去にきわめてすぐれた業績のあるかたであり、おそらく日本の乳がん治…

池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (4)

「激動」p112で池上氏はいう。「大学自治会という場はみんなの大衆組織ですから、ここで多数決をとり賛成多数が得られれば学生ストライキを打つことも可能です。しかし同じストでもバリケードでキャンパスを封鎖し、建物を封鎖し、建物を占拠するような…

中井久夫さん (続)(補遺)

前稿で「希望を処方する。」という中井氏の「医療と家族とあなたとの三者の呼吸が合うかどうかによってこれからどうなるかは大いに変わる」という言葉を紹介した。 二十年位前、妹が「悪性リンパ腫」になった。 ある金曜日、外来をしていたら、妹から電話が…

中井久夫さん (続)

中井久夫さんが亡くなられて、追悼の記事をみると、氏の業績として神戸の震災時の罹災した方々への精神的ケアを挙げているものが多い。たしかにPTSD(Post Traumatic Stress Disorder)という言葉はそのころから一般化したように思う。というかそれとは異な…

中井久夫さん

中井久夫さんが亡くなられたらしい。 中井さんの本は随分ともっている。50冊くらいはありそうである。 最初に氏の名前を知ったのは、1990年に刊行された「吉田健一頌」(書肆 風の薔薇)に収載されていた丹生谷貴志氏の「奇妙な静けさとざわめきとひし…

河野博臣 「幸福な最期 ホスピス医のカルテから」(講談社 2000年)

もう20年以上前の本であるが、最近、山崎章郎氏の「ステージ4の緩和ケア医が実践する がんを悪化させない試み」を読んで本書を思い出した。山崎氏は緩和ケア医であり、河野氏はホスピス医である。そして両書ともに著者が癌に罹患した体験記でもある。 ホ…

池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (3)

10年前の1951年に米国との間に締結された旧日米安保条約が改定の時期を迎え、時の宰相岸信介は旧条約の不平等部分の改定をすすめようとしていた。しかし、社会党が安保改定は米軍の恒久的な日本駐留を許すものであり、台湾や朝鮮の有事に日本は戦争に…

池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (2)

さて、佐藤氏は現在われわれが直面している格差や貧困などの問題の多くは左翼が掲げてきた問題そのものである、という。そうであるとすると「左翼の思考」をとりもどさなければならないのだ、と。 その問題に60年以降は、旧来の社会党、共産党に加えて「新…

I池上彰 佐藤優 「激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960-1972」 「漂流 日本左翼史 理想なき左派の混迷 1972―2022」 講談社現代新書(2022) (1)

なんでこの本を読んでみようと思ったのかというと、わたくしが悪名高い全共闘世代の一員だからである。60年安保が麻布中学2年、1968年が東大医学部1年。 60年安保の時のことで記憶にあるのは、ラジオ(短波?)で国会乱入の現場からアナウンサーが…