2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

サムライとナデシコ

何だか近々野球の国際大会があるらしく、サムライ・ジャパンがどうしたというようなことをテレビで言っていた。 男がサムライで女がナデシコというのはいかにもステレオタイプな分け方である。これは男女の間に何らかの差があることを公認するということであ…

本当の事を言おうか

谷川俊太郎に「鳥羽」連作という詩があって、その最初の「鳥羽 1」に 本当の事を言おうか/ 詩人のふりはしてるが/ 私は詩人ではない という部分がある。第二連の3行である。 わたしがこの「本当の事を言おうか」を知ったのは、大江健三郎の「万延元年のフ…

山の手育ち(3)

庄司薫の「赤頭巾ちゃん 気をつけて」は、安田講堂落城の後、東大入試の中止が発表されてしばらくして発表された。入試の中止などを背景にした作品であるからリアルタイムに書かれた作品である。この小説を読んで、それまでかすかに残っていた「小説でも書こ…

ネクタイ

中学・高校と制服だった。一浪した時は、親が買ってくれた洋服を着ていたが、ネクタイを締めた記憶はない、大学に入って親が嬉しがって作った制服を少しの間は着たが、すぐに着なくなり、後はラフな格好で通していた。 医者になり研修をはじめた時に指導医か…

ロシアあるいはスラブ2

前稿で、『おそらく西洋思想の核心は啓蒙思想であり、啓蒙思想の根は「何が正しいかをわれわれは知ることは出来ない」というものである。われわれになにが正しいかをしることができないがゆえに、われわれは互いに許し合わなくてはならない。』というような…

ロシアあるいはスラブ

2年前から、大腸がんステージ4で化学療法を継続していたが、その効果が頭打ちになったため、1月11日から本日まで、別の化学療法の副作用チェックのため入院していた。 前回入院時は急な入院で本をもちこまなかったので、スマホでキンドルで読むあまり読…

山の手育ち(2)

吉行淳之介に「戦中少数派の発言」という文がある。昭和十六年十二月八日の太平洋開戦の日の中学五年生の吉行氏の姿を描いた文である。氏は中学は麻布のはずだからわたくしの先輩であるが、当時の麻布はあちこちの学校に落ちた生徒を救済する学校であったよ…

山の手育ち(1)

わたくしは杉並区荻窪で生まれ、結婚して数年音羽に住んだ後、また荻窪の家に戻り、数年前に杉並区成田に転居したので、ほとんどを山の手で暮らしてきたことになる。 では自分が住んできたところに愛着があるかというと、そもそも無味無臭の場所で生きてきた…

入院中の読書

急な入院で、本もパソコンも持ち込まなかったので、手許にはi-phone のみの状態だった。それで、本を読むのはキンドルに入れてあった数冊の本ということになった。 もうどういう経緯であったか覚えていないが、何かの時に読むかもしれないと思っていれてあっ…