ヘルパンギーナ?

一週間位前から女房ともども感冒様でくずぐずしている。女房の方が重症で味がしない匂いがしないといっているが、わたくしのほうはそれほどではない。 今、本来は子供の病気であるヘルパンギーナが今大人にも流行っているらしい。 そういう症状であるので、…

ごまかさないクラシック音楽 (6) 第4章 クラシック音楽の終焉(1)

岡田 本書の目的は従来型の音楽史とは異なる文脈を提示すること。最近のウクライナ情勢は、ソナタ形式の再現部のよう。提示部:二つの世界大戦、展開部がベルリンの壁崩壊以後、そして2022年以降が再現部? ユーラシア大陸の中心から非西欧の狼煙が上が…

渡辺京二氏

昨日の朝刊「折々のことば」に渡辺京二氏の言葉が引用されていて、「最晩年の語り下ろしから」と書かれていた。 渡辺氏の名を初めて知ったのは、大分以前どなたかが在野の論客として何人かの名前が挙げられていたそのうちの一人としてであった。それで氏の著…

山本七平氏の日本陸軍についての論考と最近の某保険会社での不祥事

山本七平氏の軍隊三部作?「ある異常体験者の偏見」「私の中の日本軍」「一下級将校のみた帝国陸軍」はそれぞれ1974、75、76年の刊行であるが、わたくしの持っているのは、それぞれ81、75、81年の刊の本であるので、「私の中の日本軍」のみを…

《自分に正直に生きたい》

本棚の奥から呉智英さんの古い本「バカにつける薬」が出て来た。(双葉社 1988年刊) 呉智英氏の名前は「くれともふさ」と読むのが正しいようだが、わたくし的には「ごちえい」さんである。 その巻頭で、西舘好子氏の《自分に正直に生きたい》という言葉…

岡田暁生 片山杜秀 「ごまかさないクラシック音楽」(5)

第三章 ロマン派というブラックホール1.ロマン派とは何か 岡田:ロマン派はクラシック・レパートリーの本丸。 片山:小難しい古典主義ではなく、階級を問わず広く受け入れられる新しい価値が「ロマン」。 岡田:ロマン派の時代は、1800年初頭からのほ…

岡田暁生 片山杜秀 「ごまかさないクラシック音楽」(4)

第二章 ウィーン古典派と音楽の近代 ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン 片山 バッハとベートーヴェンでほとんどのことは語れる。 岡田 バッハは前近代の人、ベートーヴェンは近代の人。ハイドンには聴衆一人一人の顔が見えていた。 片山 ハイドンは雇…

代表的日本人100人

今日の朝刊に「文藝春秋」が創刊100年になるらしく、特集「現代の知性24人が選ぶ 代表的日本人100人」という企画の宣伝が載っていた。その24人がおのおの3名の代表的日本人を挙げている。広告にでているのは3x24=72名で、「文藝春秋」本体…

岡田暁生 片山杜秀 「ごまかさないクラシック音楽」(3)

第1章 バッハは「音楽の父」か 岡田 まず「神に奉納される音楽」の話から 片山 クラシック音楽は「神なき人間」が倫理的に目覚め、素晴らしい世界に到達するという啓蒙主義的なヴィジョンを表象するツール。しかし近代以前の人間はひたすら神にすがる。古楽…

勇気凛凛ルリの色

浅田次郎氏に「勇気凛凛ルリの色」というエッセイ集がある。その中に「タイトルについて」という「勇気凛凛ルリの色」という題を説明した文がある。それにこの「勇気凛凛ルリの色」という言葉を38歳以上は知っていて、37歳以下は知らないとある。これは…

まごころ

前稿で、『わたくしは「まごころ」などというものをいまだに信じている古い人間』といったことを書いた。それで、フロベールの「三つの物語」のなかの「まごころ」を思い出した。 「三つの物語」は「まごころ」「聖ジュリアン伝」「ヘロデイアス」の3編を収…

谷沢永一「人間通」と最近のマスコミの報道の姿勢

大分古い本だが、谷沢永一氏に「人間通」という本がある。1995年に新潮選書として刊行され、2008年に増補版が刊行されている。 わたくしは「まごころ」などというものをいまだに信じている古い人間なので、ここで谷沢氏が述べている様々な日本で生き…

「レコード芸術」終刊

今日の朝日新聞朝刊に「レコード芸術」の「最終号」71年間 ありがとう ございました」という広告が出ていた。 71年間ということは、わたくしが幼稚園の頃の創刊である。CDではなくレコードである。そのころはEPが出た時期らしい。 わたくしが小学生の…

関白宣言

さだまさしに「関白宣言」という歌がある。結婚を前にした男が婚約者を前に、おれは関白な亭主になるから覚悟をしておけと宣言するといった内容の歌である。 黙って俺について来いとか、つまらぬ嫉妬はするなとか、お前は家をすてて俺のところに来るのだから…

一昔前の話

今から50年以上前、わたくしがまだ大学教養学部の学生のころ、法学の授業(長尾龍一先生)できいた話である。当然細部はうろ覚え。 先天性の異常のため男性性が過剰であるひと(ヤコブ症候群 ⅩYY?)は犯罪をおかしても処罰されないことに当時の法律ではな…

岡田暁生 片山杜秀 「ごまかさないクラシック音楽」(2)

序章 バッハ以前の一千年はどこに行ったのか こういうタイトルであるが、相当部分が「クラシック音楽」とは何なのかについての議論となっている。 西洋音楽は9世紀にグレゴリア聖歌が整えられた辺りから始まる。それなのになぜクラシック音楽はバッハ以後の…

町田康 「口訳 古事記」

この本は新聞の広告で知った。今日届いたばかりなのでまだ最初の「神xyの物語」しか読んでいないが面白い。 町田氏の古典口語訳?は池澤夏樹個人編集の「日本文学全集」(河出書房新社)の「宇治拾遺物語」の訳がとても面白かった。それでこれも面白いだろ…

岡田暁生 片山杜秀 「ごまかさないクラシック音楽」(1)

2023年5月25日新潮社刊の本。まだ出版されたばかり。二人の対談の前後に、「はじめに」を岡田氏、「おわりに」を片山氏が書くという構成。 岡田氏は『オペラの運命 十九世紀を魅了した「一夜の夢」』『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』『「クラシッ…

荒川洋治 「文庫の読書」

荒川氏が1992年から2022年までに書いた62冊の文庫についての書評・エッセイ・巻末解説を収めたもの。中公文庫の文庫オリジナルであり、本年4月25日刊であるから刊行間もない本である。 このうちどのくらい自分が読んでいるかなという興味で入手…

西洋だけにあるもの?

You tube でカラヤンが振っているヴェルディのレクイエムの「怒りの日」を見て(聴いて)、これは日本にはまったくないものではないかと感じた。Dies iræ, dies illa solvet sæclum in favilla: teste David cum Sibylla Quantus tremor est futurus, quando…

科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純

偶然古書店で見つけて買ってきた。西尾成子「科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純」(2011 岩波書店)。 石原純は理論物理学者であるとともに歌人としても有名であり、また現在ではおそらく原阿佐緒という女性との恋愛事件で歴史に名を留めているの…

柴田翔「されどわれらが日々―」

書棚の奥から昔の本がいろいろとでてくる中で、柴田翔「されどわれらが日々―」が出て来た(藝春秋新社 初版1964年 定価340円)。わたくしが持っているのは1965年刊の11版。高校2年位に読んでいるようである。64年上期の芥川賞受賞作。 当時…

「優雅な怠惰」と「晴朗な精神」

本棚を整理していたら奥から小野寺健氏の「E.M.フォースターの姿勢」(みすず書房 2001年)が出て来た。その「あとがき」に、「優雅な怠惰」と「晴朗な精神」という言葉が出てくる。これこそが「真の教養人」であるフォースターをつかむキーワードとし…

本棚の整理

本というのは背表紙が見えるように配架しないと価値が半減するのだが、本が増えてくるとそうはいっていられなくなる。でかなりの本が背表紙が隠れる状態になっていたのだが、最近本棚を一つ増やすことが出来て、かなりは改善することが出来た。 新しい本棚に…

長谷川眞理子「進化的人間考」(6) 第18章「進化心理学・人間行動生態学の誕生と展望」

最終章である。まず進化心理学の概説。これは20世紀の後半に始まった学問分野であり、たかだか30年余の歴史しかまだない。そのため多くのひとには馴染みがない学問分野であろう。 これはヒトの心理学に進化生物学を取り込むことにより、心理学に新たな風を…

昨日の記事への補足

昨日「わたくしは自分がご主人より先に死ぬと思っている奥様をみたことがない。」と書いたが、これはもちろんご夫婦ともに健康あるいは高血圧・糖尿病・脂質異常症といった慢性疾患はあっても日常の生活は特に問題なく送れているご夫婦の場会であって、どち…

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に引き下げの日の東大病院

わたくしは今東大病院に通院しているが、たまたま本日が定期通院日で受診の日だった。それで病院のアナウンスを聴いていたら「本日から5類への移行のため従来行っていた入院患者様への面会制限を撤廃し、入院患者様への面会は午後2時から午後7時まで二名…

長谷川眞理子「進化的人間考」(5)第14章「ヒトの適応進化環境と現代人の健康」 第15章「ヒトの適応進化環境と社会のあり方」 第16章「言語と文化」 第17章「人間の統合的理解の行方」

直立二足歩行する人類は600~700万年前に出現した。さらに20万年の間にホモ・サピエンスに進化した。 「適応進化環境」という概念がある。 先進国の食生活の問題は砂糖・塩・脂肪の摂りすぎである。これらはみなヒトの生存に不可欠なものであるが、…

長谷川眞理子 「進化的人間考」(4) 第13章「人はなぜ罪を犯すのか - 進化生物学から見た競争下での行動戦略」

ちょっとこの章のタイトルは厳しいのではないかと思う。人間以外の動物が「罪」を犯すとは思えないからである。 1970年代半ばにでたE・O・ウイルソンの「社会生物学」からこの種の問題提起がなされてきたわけであるが、これはダーウインの「種の起源」出…