「吉田健一の医学論」についての若干の前書き

  
  

    1)「吉田健一の医学論」(1987年)。
 
 40歳の頃のもの。自分でワープロで書き、印刷し、コピーして、数冊製本し、ごく親しい友人何人かに配ったもの(栃折久美子さんの本を参照したが、素人の悲しさで、できそこないの本を数冊作ったらもういやになってしまった。「限定10部。本書はそのうちの第何部」というのは、格好いいと思ったのだが、実際に作ったのは6冊くらいだったか)。400字詰めの原稿用紙で400枚弱?
 このころ吉田健一に熱中していて、医者という職業と吉田健一の著作をなんとか結びつけられないかと考えた。何か本というものを一冊、書いてみたかったのだと思う。
 今なら、そんな面倒なことをせずに、ホーム・ページとかブログにアップしてしまう手があるわけだが、20年以上前には、まさかそんなことができる時代がこようとは想像もできなかった。
 一応、本にすることを考えていたので、縦書きを前提にしている。それで「右の文章は」というのを横書きでは「上の文章は」と直さねばならないのだが、面倒なのでしていない。
 また、明らかな間違い(例えば、吉田健一の英国留学の期間を足かけ3年と書いているが、実は半年くらいらしい)も訂正していない。1987年に書いたままにしてある。
 引用は字下げにしたのだが、テキスト・ファイルに戻したら、その情報が飛んでしまった。どこが引用でどこが地の文章かは、それでも、だいたいはわかると思う。
 やたらと引用が多い。自分の文章など読んでもらう価値もないが、引用した文章を楽しんでもらえたらという謙虚な?気持ちと、こんなに本を読んでいるんだぜと自慢したい傲慢な気持ちの混合なのであろうが、著作権にふれないか、いささか心配である。
 最近、何人かのひとと議論して、自分の考えはこのころからあまり進歩していないと思うことがあり、思い出して、ここに載せることにした。あとあと自分で参照しやすいようにしたいというのが目的の大半であるが、コンピュータのバックアップをまめにしていないので、ハードディスクが飛んでしまったりしても、ここに載せておけば、保存されるであろうということもある。

  
   2)「生きる喜び」(「毎日二十一世紀賞」応募論文)(1986年)
 付録として「生きる喜び」(「毎日二十一世紀賞」応募論文)(1986年)を附した。
 かつて毎日新聞に「毎日二十一世紀賞」という懸賞論文の制度があり、昭和六十一年のテーマが「人間と生命」だった。賞金が百万円と、それ以上にその当時まだとても高価であったワープロが副賞でもらえるのに目がくらんで、応募してみた。最終選考には残ったものの入賞できず、賞金とワープロにはありつけなかった。
 当選目的で選者(もう誰だか忘れてしまった)に媚びた部分もあり、落選して当然だが、(学位論文を除いては)自分としてはじめて書いた長い文(400字詰め50枚くらい?)となった。
 これを書いたことでもっと長いものも書いてみたくなり、「吉田健一の医学論」を書くことになったように記憶している。一年先行するだけだから、当然、内容はオーヴァーラップしている。それで、ここに附してみた。
 
 2009年1月17日