凡例および後書

 
   凡例および後書
   
 吉田氏の著作からの引用は、こちらの手許にあるのが原書房版の「全集」、集英社版の「著作集」および各種単行本と様々であるため、手持ちのものを適宜用いた。
 その際、歴史的かなづかいは現代かなづかいにあらためた。また漢字も正字を略字にあらためたところが多い。しかし、送りがなについては吉田氏のものをなるべく遵守する方針とした。
 本文中に引用あるいは言及した吉田氏以外のひとの著作、直接引用や言及はしなかったが執筆時に念頭にあった著作については、後に「文献」として一括してまとめた。同じ著作に二度以上言及している場合には、初出のみとした。ここでも、歴史的かなづかいを現代かなづかいにあらためたが、ただ石川淳氏からの引用のみは歴史的かなづかいのままとした。これは専ら趣味の問題である。「文献」をみるとわかるように、著しく翻訳が多い。それらは総て翻訳を読んだだけで原典にあたったものはない。こちらの怠慢と語学力の欠如によるが、日本の翻訳の現状というのは誰でも知っての通りである。原著の意図をとりちがえている可能性は充分にある。吉田氏は沢山の翻訳を残しているが、自分ではまず翻訳は読まず、翻訳で読む人間を軽蔑していたとのことである。こういう翻訳からの引用に充ちた本を吉田氏は軽蔑するであろうと思う。
 書きだした時は、吉田氏の著作の中から好きな部分を引用して、その間にちょこちょこっと感想をはさんでいけば良いという気楽な気持であったが、段々とそうはいかなくなってきた。何の答えも出すことはできなかったが、問題の所在だけはおぼろげに見えて来たような気がする。
 とにかく、これを書くことで、二十歳ごろから二十年位にわたっていろいろと本を読んできたことの一つの区切りとしたい。
 
 なお、本文中に引用あるいは言及した吉田氏の著作は左の如くである。
「文句の言いどおし」吉田健一全集第十巻 原書房、「時間」新潮社、「ヨオロツパの世紀末」新潮社、「瓦礫の中」中央公論社、「文学の楽み」吉田健一著作集第十四巻 集英社、「英国の文学」吉田健一全集第一巻 原書房、「覚書」青土社、「私の食物誌」中央公論社、「文学概論」吉田健一全集第九巻 原書房、「交遊録」新潮社、「絵空ごと」河出書房新社、「ヨオロツパの人間」新潮社、「昔話」青土社、「読む領分」新潮社、「酒宴」吉田健一全集第六巻原書房、「書架記」中央公論社、「書き捨てた言葉」吉田健一全集第三巻 原書房、「不信心」吉田健一全集第十巻 原書房、「三文紳士」吉田健一全集第三巻 原書房、「思い出すままに」集英社、「定本 落日抄」小沢書店。
 
 
  文献
 
   序にかえて
K・ポパー「果てしなき探求−知的自伝」森博訳 岩波現代選書
G・ベイトソン「精神と自然」佐藤良明訳 思索社
アーサー・ケストラー「機械の中の幽霊」日高敏隆長野敬共訳 ぺりかん社
 
   第1章.
ユリイカ」77年12月号 特集=吉田健一 青土社
川喜田愛郎「近代医学の史的基盤」岩波書店村上陽一郎「近代科学と聖俗革命」新曜社
ヴァレリーレオナルド・ダ・ヴィンチの方法への序説」菅野昭正・清水徹訳 ヴァレリー全集5 筑摩書房
P・C・W・デイヴィス「ブラックホールと宇宙の崩壊」松田卓也・二間瀬敏史訳 岩波現代選書NS
ライアル・ワトソン「生命潮流」木幡和枝・村田恵子・中野恵津子訳 工作舎
F・カプラ「タオ自然学」吉福伸逸田中三彦島田裕巳・中山直子訳 工作舎
佐藤文隆「ビッグバンの発見」 NHKブックス
青木重幸「兵隊を持ったアブラムシ」 どうぶつ社
養老孟司「ヒトの見方」 筑摩書房
モーリス・クライン「不確実性の数学」三村護・入江晴栄訳 紀伊国屋書店
吉田斉「科学社会学の構想」 リブロポート
G・レイシャル G・ヘテニー W・フィーズビー「インシュリン物語」二宮陸雄訳 岩波書店
W・B・キャノン「からだの知恵」舘鄰・舘澄江訳 講談社学術文庫
畑中正一「ウイルスとガン」 岩波新書
ナンシー・C・アンドリアセン「故障した脳」岡崎祐士・安西信雄・斎藤治・福田正人訳 紀伊国屋書店
 
   第2章.
K・ローレンツ「攻撃 悪の自然誌」日高敏隆・久保和彦訳 みすず書房
コンラート・ローレンツ「ソロモンの指環」日高敏隆訳 早川書房
ティーヴン・J・グールド「ダーウィン以来」浦本昌紀・寺田鴻訳 早川書房
ティーヴン・J・グールド「パンダの親指」桜町翠軒訳 早川書房
D・H・ロレンス「現代人は愛しうるか−アポカリプス論−」福田恆存訳 筑摩叢書
D・H・ローレンス「無意識の幻想」小川和夫訳 南雲堂(特に小川和夫氏による解説)
福田恆存「ロレンス」 福田恆存評論集2 新潮社
西脇順三郎「えてるにたす」 西脇順三郎全集? 筑摩書房
司馬遼太郎「人間の集団について」 中公文庫
エリック・J・キャッセル「医者と患者」大橋秀夫訳 新曜社
鎮目恭夫「ウィーナー」 岩波書店
ティーブ・S・ハイムズ「フォン・ノイマンとウィーナー」高井信勝監訳 工学社
グレゴリ・ジルボーグ「医学的心理学史」神谷美恵子 みすず書房
大岡信岡倉天心」 朝日新聞社
「宝石の声なる人に プリヤンバダ・デーヴィーと岡倉覚三 愛の手紙」 大岡信編訳 平凡社
 
   第3章.
E・O・ウィルソン「社会生物学」伊藤嘉昭監訳 思索社
C・P・スノー「二つの文化と科学革命」 みすず書房
コリン・ウィルソンユング 地下の大王」安田一郎訳 河出書房新社
シュレーディンガー量子力学の現状」井上健訳 世界の名著80「現代の科学?」 中央公論社
マックス・ヤンマー「量子力学の哲学」井上健訳 紀伊国屋書店
J・モノー「偶然と必然」渡辺格・村上光彦訳 みすず書房
フリッチョフ・カプラ「ターニング・ポイント」吉福伸逸田中三彦・上野圭一・菅靖彦訳 工作舎
マイクル・バリント「プライマリ・ケアにおける心身医学」池見酉次郎・杉田峰康・松山茂・小野亨雄 診断と治療社
「パテーマ」第一号 一九八二年一月 ゆみる出版
 
   第4章.
中村稔「羽虫の飛ぶ風景」 青土社
大岡信「悲歌と祝寿」 青土社
W・H・ソープ「生命=偶然を超えるもの」吉岡佳子訳 海鳴社
テイヤール・ド・シャルダン「現象としての人間」美田稔訳 テイヤール・ド・シャルダン著作集1 みすず書房
E・シュレーディンガー「生命とは何か」岡小天・鎮目恭夫訳 岩波新書
向田邦子「あ・うん」 文芸春秋
レイモンド・チャンドラー「長いお別れ」清水俊二訳 ハヤカワ・ミステリ文庫
天野忠詩集 永井出版企画
天野忠詩集 土曜美術社
丸谷才一「雁のたより」 朝日新聞社
大岡信「草府にて」 思潮社
大岡信「透視図法−夏のための」 書肆山田
デズモンド・モリス「裸のサル」日高敏隆訳 角川文庫
石川淳「夷斎筆談」 石川淳全集第十一巻 筑摩書房
石川淳「文林通言」 中央公論社
中村稔詩集 思潮社
 
   第5章.
カール・ポパー「科学的発見の論理」大内義一・森博訳 恒星社厚生閣
K・R・ポパー「推測と反駁」藤本隆志・石垣寿郎・森博訳 法政大学出版局
K・ポパー「客観的知識」森博訳 木鐸社
K・ポパー「歴史主義の貧困」久野収・市井三郎訳 中央公論社
ポッパー「自由社会の哲学とその論敵」武田弘道訳 世界思想社
カール・R・ポパー ジョン・C・エクルズ「自我と脳」西脇与作訳 思索社
カール・R・ポパー K・ローレンツ「未来は開かれている」辻 訳 思索社
河上徹太郎「自然と純粋」 河上徹太郎全集第一巻 勁草書房
ウィトゲンシュタイン論理哲学論考」奥雅博訳 ウィトゲンシュタイン全集1 大修館書店
アブラハム・パイス「神は老獪にして・・・」西島和彦監訳 産業図書
池島信平対談集「文学よもやま話」 文芸春秋
ラフォルグ抄 吉田健一訳 小沢書店
 
   第6章.
養老孟司「形を読む」 培風館
梅棹忠夫「わたしの生きがい論」 講談社
G・ベイトソン「精神の生態学」佐伯泰樹・佐藤良明・高橋和久訳 思索社
現代思想」一九八四年五月号 特集=ベイトソン 青土社
「談」一九八四年春季号 特集「ダブルバインドがおしえるもの」 たばこ総合研究センター
浅田彰ダブルバインドを超えて」 南窓社
トーマス・クーン「科学革命の構造」中山茂訳 みすず書房
I・ラカトシュ A・マスグレーヴ編「批判と知識の成長」森博訳 木鐸社
村上陽一郎「西欧近代科学」 新曜社
村上陽一郎「物理科学史」 放送大学教育振興会
P・チュイリエ「反=科学史」小出昭一郎監訳 新評論
渡部昇一「文科の時代」 文芸春秋
「動物と人間のあいだ」 講談社ゼミナール選書
 
   第7章.
フィリップ・K・ディックアンドロイドは電気羊の夢を見るか?浅倉久志訳 ハヤカワ文庫SF
R・D・レイン「ひき裂かれた自己」阪本健二・志貴春彦・笠原嘉訳 みすず書房
山川方夫全集 第四巻 冬樹社
福田恆存チェーホフ」 福田恆存評論集 第2巻 新潮社
徳永進「死の中の笑み」 ゆみる出版
ダグラス・R・ホフスタッター「ゲーデルエッシャー、バッハ」
野崎昭弘・はやしはじめ・柳瀬尚紀訳 白揚社
山本哲士「学校・医療・交通の神話」 新評論
松田道雄「人間と医学」 松田道雄の本6 筑摩書房
B・ディクソン「近代医学の壁」奥地幹雄・西俣総平訳 岩波現代選書NS
小比木啓吾「シゾイド人間」 朝日出版社
倉橋由美子「わたしのなかのかれへ」 講談社
中本征利「何のために心理療法を学ぶのか」 勁草出版サービスセンター
伊丹十三「女たちよ!男たちよ!子供たちよ!」 文春文庫
 
   第8章.
倉橋由美子夢の浮橋」 中央公論社
倉橋由美子「城の中の城」 新潮社
倉橋由美子「シュンポシオン」 福武書店
倉橋由美子「迷路の旅人」 講談社
倉橋由美子「磁石のない旅」 講談社
倉橋由美子「最後から二番目の毒想」 講談社
「医のこころ」一〜六 丸善
R・ドーキンス「生物=生存機械論」日高敏隆 岸由二 羽田節子訳 紀伊国屋書店
鎮目恭夫「自我と宇宙」 みすず書房
N・コールダー「人間、この共謀するもの」田中淳訳 みすず書房
G・K・チェスタトン「正統とは何か」福田恆存安西徹雄訳 G・K・チェスタトン著作集第一巻 春秋社
Dylan Thomas 「 Collected Poems 1934-1952 」 Dent
 
   第9章.
矢田挿雲「江戸から東京へ」 芳賀書店
なだいなだ「江戸狂歌」 岩波書店
アリエス「死と歴史」伊藤晃・成瀬駒男訳 みすず書房
岸田秀「嫉妬の時代」 飛鳥新社
岸田秀「幻想の未来」 河出書房新社
丸山圭三郎「文化記号学の可能性」 日本放送出版協会
フロベール「三つの物語」山田九朗訳 フローベール全集4 筑摩書房
チェホフ「可愛い女」神西清訳 チェーホフ全集11 中央公論社
「葡萄酒の色」吉田健一訳詩集 小沢書店
 
   第10章.
「人間の生命について考える」講談社
森鴎外「かのように」鴎外選集第四巻 岩波書店
ブローディ「医の倫理」館野之男 榎本勝之訳 東京大学出版会
R・メルザック P・D・ウォール「痛みへの挑戦」中村嘉雄監
訳 誠信書房
福原麟太郎「諸国の旅」福原麟太郎著作集5 白水社