水野肇 「誰も書かなかった日本医師会」

   草思社 2003年 8月28日 初版


 とりあげるほどのの本ではないかもしれないが・・・。
 ここに書かれている武見太郎の像が面白かった。その言、医師会員の三分の一は、医療費の上がることしか考えず、勉強もしない”欲張り村の村長”のような連中である。しかし、その連中をどうコントロールするかが医師会長の一番難しい仕事である・・・。
 おそらく政治家(特に自民党の政治家?)は、みんなそんなことを思っているのだろうなと思う。橋本治だかが、まともな知性をもった人間なら現在日本の政治家になろうと思うような人間はまずいないだろうというようなことをいっていた。だから、二世・三世の政治家ばかりがでてくるのだという。二世・三世は、一から政治をはじめる人間にくらべると、まだどぶ板的なことをあるいは利権誘導的なことをそれほどはしなくてもすむらしい。
 ところで、水野氏がこの本を書いた動機の一つは医師会の現会長である坪井氏の擁護ということにあるように思える。坪井氏は武見氏以来の『思想』のある医師会長であるのに、その医師会長が、わずかな医療費の削減を認容したために、”欲張り村の村長”たちからあやうく不信任されそうになっている、そういうことでは日本の医療に未来はない、ということをいいたいらしい。たしかに自分の収入が減るということは断じて容認できないという医者がある数いるようである。
 某医師会幹部が、医者が高収入であるのはよい、自分たちの仕事からいって当然の報酬である。しかし金があっても、あるような態度をしてはいけない。そういう態度をするから世間の嫉妬の対象になり、医者への批判的論調があとを絶たないのだ、というような情けないことを、会報に書いていた。たしかに水野氏のいうことも一理ありそうである。