青島広志 「作曲家の発想術」

   [講談社現代選書 2004年8月20日初版]


 青島氏は昔ちょっと名前をきいて最近ほとんど耳にすることのない作曲家である。本書によれば全然注文がこないのだそうである。
 前半は作曲家としての履歴。真ん中が自分の曲をふくむさまざまな楽曲の紹介。最後が簡単な作曲例。
 基本的にはこのひと冗談音楽の作曲家らしい。紹介されているのはとんでもない曲が多い。そういえば、昔、この人の「ビートルズの主題によるソナチネ」とかいうピアノピースを買ってきて弾いてみたことがあった。
 ベートーベンの運命第一楽章の展開部が機械的で霊感が感じられずつまらないとか、いろいろほかではきかないユニークなことが書いてある。わたくしは運命第一楽章は完璧なソナタ形式作曲例だと思っていたのだが・・・。
 これを読んで、専門家でも移調楽器の譜を読むのは容易ではないらしいとか、ショパンの幻想即興曲の右手16分音符、左手8分音符の3連符という最小公倍数12のところはプロでも弾くのが難しいとか書いてあって衝撃だった。プロはなんなく移調楽器の譜面を読むのだと思っていたし、プロのピアニストなら右手と左手をまったく独立してあやつることができて、右手と左手が別のリズムなんてなんでもなく弾けるのだと思っていた。著者の推測はおどろくべきもので、ショパンは和音だけを決めて、左手は適当に弾いていたのではないかという。だからその和音内の音であればどれを弾いてもいいのではないかという。早くそういってくれればいいのに。