佐藤愛子 「それからどうなる」

   [文藝春秋社 2004年8月30日 初版]


 どこかで小谷野敦が、佐藤愛子の啖呵を賛嘆していた。佐藤がすぐ人に同情し、結果裏切られてきたのに、また同じことを繰り返しそうになっているのをみて、誰かがいいかげん勉強したらというようなことをいったのに対して、そういう冷静な態度で生きて何か面白い。人に同情し、裏切られ苦労する。そういう人生のほうがよっぽど上等ではないか、というようなものいいである。
 本書もまた同じ。
 自分の人生の理想は「野人」として生きるということであるが、自分では、「朝廷・政府に仕えない人。民間の人。在野の人」の野人のつもりであるが、人からは「礼儀を知らない人。粗野な人。粗暴な人」の野人と思われているであろうという。
 捨て犬を飼う話。急病で入院する話。みな面白い。何にでも怒る。しかし、邪気はない。
 この本の副題は「我が老後」というのであるが、それに必要なものは、ただ「毅然たる覚悟」であると。要するに死を自分の思うように操ることなどできないのだから、どうなっても受け入れるという覚悟のみが大事なのであると。
 
 さてわたしも「野人」「在野の人」になりたいと思う。問題は「民間」の人の「民間」である。会社という「民間」がまるで、「朝廷・政府」のような「公」になっている場合が多いから、民間の人必ずしも野人ならずということがあるから