村上春樹 「ふしぎな図書館」

  [講談社 2005年1月31日初版]


 佐々木マキの挿絵がたくさん入った絵本。童話というのかどうか? 読者として大人を意識したものなのかどうか?
 ロダーリの「ファンタジーの文法」で紹介されているプロップの民話の構造分析によれば、典型的な民話の構造は、ある年齢に達すると子どもは家族から離れ、森につれていかれる。そこでは魔術師がおそろしい格好をし、子どもに試練を課す。子どもは試練を乗り越え家に帰る、というものであるが、本書もかなり忠実にその形をまもっている。
 10分くらいで読めてしまう話でどうということはないといえばそれまでの話であるが、受身の男の子が女の子に救われるという相変わらずの村上節ではあるのかもしれなくて、小谷野敦あたりは、何かいうかもしれない。

(2006年4月16日ホームページhttp://members.jcom.home.ne.jp/j-miyaza/より移植)
 

ふしぎな図書館

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