電子納税を試みるの記

 
 住んでいる杉並区が今年から住基ネットに加入したので、ネットからの納税にトライしてみることにした。しかし、これがとんでもない代物であった。
 まず、区役所にいって住民基本台帳カードを作って電子証明書を発行してもらわなければならない。納税時期の前だからか、あるいは今年制度を導入したためか、土曜もひらいていて、役所の対応も低姿勢で、これはそれほど時間がかからずにできた。
 ICカードリーダーは通販で手にいれた。
 それで早速、e-taxソフトというのをダウンロードし、闇雲に入力をはじめようとしたのが最初のつまづきであった。e-taxソフトというのはあらゆる納税に対応した汎用版のようで、確定申告といったシンプルなことに対応するには複雑すぎ、斧で鉛筆を削ろうとするようなものであった。説明もさっぱり理解できず、初日はそこで挫折した。
 次の日は腰をすえて、インターネット上で、検索をおこなってみた。いたるところに、こんなものは使えたものではないという愚痴と恨みの声が満ちていた。その中にどこの解説がわかりやすいか比較検討している親切なかたの記事があって、都のものがわかりやすいと書いてあったので、見てみた。確かにわかりやすい。が、ダウンロードしてみたら30ページをこえる分量である。本当に手取り足取り一から書いてある。これならいけそうというので安心してその日は、そこまでで寝た。
 翌日そのマニュアルにしたがってはじめた。信頼済みサイトの登録、ルート証明書のインストール、公的個人認証利用者クライアントソフトのインストール、署名送信モジュールのインストールなどおこない、進めたていったのだが、肝心のところでとまってしまった。ICカードリーダーが住基カードの情報を読んでくれないのである。その日はそこで挫折した。
 4日目、またまたネットで研究した。どうもICカードリーダーのドライバーをあとからいれたのがいけないらしいという可能性にいきあたった。それでクライアントソフトをいったん削除し、再インストールしたら、今度は読んでくれるようになった。
 それで気をとりなおして、最初からトライ、今度はなんとか最後までたどり着き無事確定申告をネット上ですることができた。
 ところがある。あとはいくらいくらをどこに納付してください、という風にはならないのである。これはあくまで申告だけであって、納税はまた別なのである。気をとりなおして、電子納税の説明をみると、これがまったくの意味不明な文である。それでその日はそこでおしまいとなった。
 5日目、あらためて電子納税についてネットで検索。またまたそれがいかにわかりにくいかについての愚痴と非難のオンパレードであった。その中からなんとかわかりやすい解説をみつけプリントアウトした。その解説にしたがい、国税庁の収納機関番号が00200であるとか、納付番号というのが利用者識別番号であるとか、確認番号というのが収税用確認番号であるとか、納付目的コード(自分でつくらなくてはいけない)が0204420となり、申告所得税の平成20年確定申告をあらわすとか、難関をひとつひとつクリアしていって、ようやくインターネットバンキングで納税までたどりつくことができた。
 スタートから使った時間はどのくらいだろう。9〜10時間?
 お役所仕事というのも愚かであるが、それに加えて個人情報保護への配慮がくわわるとこういうことになるらしい。そもそも電子申告をしても電子納税をしても、むこうからこちらの電子メールアドレスに、「提出された書類をうけとりました」とか「たしかに納税されました」とかいったメールがくるわけでもない。自分用に作成されたメールボックスの中を探しにいかなければならない。およそサービス精神ゼロである。
 そもそも電子申告と電子納税が別個のものとなっていて、連結されていないのも腑に落ちない。電子申告をしようとするひとはネット上ですべてを完結したいという指向をもっているものが多いであろうと思われるのに、それに対応しようという発想がない。
 これでは普及しないであろうと思う。いったいこのシステムで納税しているひとはどのくらいいるのだろうか?
 以上、単なる愚痴であるが、今度の週末に電子申告や電子納税を試みるつもりのかたがあるかもしれないと思い書いてみた。一刻も早くとりかかったほうがいいです。