D・R・ホフスタッター「ゲーデル、エッシャー、バッハ」

   白揚社 1985年
 
 昨日のエントリーでゲーデル不完全性定理などと書いていて、この本を思い出した。
 ハード・カバーのかなり大型の本で700ページ超の大冊である。1985年出版で4800円となっているから、今だとどのくらいの定価になるのだろうか? 相当評判になり、ベストセラーではないにしてもかなり売れたように記憶している。ゲーデルについて論じた本が一般読者の相当数の興味を引いたというのは、考えてみればなかなかとんでもないことではある。今、読み返してみても半端でなく難しい本である。メモによれば発売から割合すぐに購入しているのだが、読むのには一月くらいかかっているから、相当難渋したのであろう。
 わたくしのような人間はゲーデルの論文自体を読んでも理解などできるわけないのだから、そういう人間にそれでもなんとなくゲーデルの定理というものの輪郭をわかったような気にさせるというのが本書のような書物のねらいであろう。
 それでエッシャーとバッハが補助線としてでてくるのだが、これがゲーデルと関係があるのかどうか、よくわからない。あまり関係ないような気がする(特にバッハ)。エッシャーは絵、バッハは音楽で、ふんだんにエッシャーの絵がでてきて、時にバッハの楽譜もでてくのだが、結局これは自己言及ということの例としてでてきているだけであって、ゲーデルの定理というのも「クレタ人の嘘つきの背理」とどこかで関係しているんだなということを読者に匂わせるためにでてきているように思われる。
 こういう本が出版されてそれなりに売れた1980年代というのは今よりも随分と出版事情がよかったのだろうなと思う。
 

ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環

ゲーデル,エッシャー,バッハ―あるいは不思議の環