今日入手した本

吉田健一 ---生誕100年 最後の文士 (KAWADE道の手帖)

吉田健一 ---生誕100年 最後の文士 (KAWADE道の手帖)

 偶然書店で発見。金井美恵子さんと丹生谷貴志氏との対談。金井氏の小説というのは読んでいなくて、本屋で立ち読みするくらいで、吉田健一文体影響の被害者の一人なのだろうなあと思っているのだが、「丸谷才一金井美恵子がいる限り、日本語は大丈夫だ」と健一さんはいっていたのだそうな。
 松浦寿輝さんは、先日、國分功一郎さんの『暇と退屈の倫理学』を読んだなどと書き、こういう本も松浦さんは読んでいるのだなと思うが、國分さんの説だと、動物は退屈しないということになるようです。倦怠に悩むのは人間だけで、暇と退屈から逃れるためには動物化することが必要だというのですが、私はどうも吉田健一が正しくて、犬や猫は退屈しているような気がするんです、と書いている。松浦説に双手を挙げて賛成。
 
聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化 (中公文庫)

聴衆の誕生 - ポスト・モダン時代の音楽文化 (中公文庫)

 前から評判はきいていた本なのだが、今度、文庫化されたらしい。最初に刊行されたのが、1989年。「七年後の「ポストモダン」」という補章を追加した増補版が1996年、ということで、今度文庫化にさいして「文庫版あとがき」として著者はいろいろ弁明を試みているが、最初の刊行された1989年はバブルの終わる直前。増補版がバブル崩壊の反省期、そして今回文庫刊行の2012年は失われた20年の自信喪失期ということで、本体、補章、文庫版あとがき、それぞれがいかにもそれぞれの時代を映し出していて面白い。ポストモダン思想というのは(少なくとも日本では)バブルの産物だったのだなあということを、本書を読んでいてつくづくと感じる。(本場?の)フランスではもっと苦いものであったのかもしれないポスとモダン思想が、日本にくると妙に浮かれた軽いものになってしまったのは、(今から思うと)そのためなのであったのであろうと思われる。