今日入手した本

 前に「花柳小説名作選」を読んだ流れで。「名作選」も拾い読みで、覚えているのは里見とんの「いろをとこ」だけ。わたくしは野暮天の極致の人間なので、こちらの方面はまったく疎いのだが、前のにもこちらにも吉行淳之介の作が入っている。思い出してみれば、小学校高学年の愛読書が「怪人20面相」、中学では「風と共に去りぬ」、高校が太宰治で、大学のはじめが吉行の娼婦ものなのだった。「傑作選」のほうの「寝台の舟」を読みかえしてみた。たぶん、「私は、精根尽き果てかけていた」なんて文に共感していたのである。20歳前後の若者がいったい何でそんな?であるが、文学の毒というのはそういうものなのだろう。大学の半ばからあとは、もっぱらその毒を消すための読書をしてきているように思う。その毒に気づかせてくれたのが、大学紛争(闘争)だった。
 
幕末の天皇 (講談社学術文庫)

幕末の天皇 (講談社学術文庫)

 前に家近良樹氏の「孝明天皇と「一会桑」」を読んで、孝明天皇というのが実に変わったひとであることだけはよくわかった。ある時期には全然力を失っていた天皇が、幕末から明治維新にかけてなぜ表舞台にでることができたのかはとても不思議なことである。家近氏の本でもある程度そこことには触れられていたが、本書はそれを正面からとりあげたものらしい。