今日入手した本。

ドキュメント 深海の超巨大イカを追え! (光文社新書)

ドキュメント 深海の超巨大イカを追え! (光文社新書)

 ダイオウイカ(大王烏賊)というとんでもなく大きなイカがいて、深海に住んでいるので、なかなか映像でとらえることができず、ようやくそれができたというのでNHKで放映されるらしい(映画にもなっているらしい)。その撮影の苦心談を綴った本である。
 ダイオウイカというのは体調10mくらいもあるらしい。目が30cmもある。本書に添えられている写真でもなかなかの迫力である。普通のイカが体調30cmくらいであるとすると、30倍。とすれば体積は1万倍くらいになるはずである。イカの一種であるとすると、遺伝的にはイカと同族であるはずで、このように大きくなるためには、一個一個の細胞が大きくなるのだろうか? それとも細胞の数が増えるのだろうか? そこらあたりの生物学的なことは何も書いていない。
 そういう変なことが気になるのは、昔読んだG・ベイトソンの「精神と自然」に「四倍体の馬の物語」というのがあって妙に記憶に残っているからである。染色体が通常の4倍あるこの馬は、身長も背丈も横幅もすべて通常の馬の2倍ある。ということは体重は普通の馬の8倍、表面積は4倍。皮膚と皮下脂肪の厚さは2倍で、熱放散が悪く、表面積が4倍になったくらいでは体温の維持が困難である。体重を足は支えられない。8倍の体に必要な空気に対して気管の断面は4倍でしかない。8倍食べなければならないのに、食道の断面は4倍にしかなっていない。というようなことが書いてあって、ああそうなのかと思ったのである。「ミクロの決死圏」という映画があったが、あれは嘘なのね、と膝を打った。人間を小さくして、人体に送り込み、体内から治療をするというような話だったと思う。しかし、そんなに縮小したら、血液の粘度のなかで活動することなどできるわけはないし、そもそも生きていることさえできない。蠅などがガラスの上を這っていけたりするのは、小さくて軽いので、摩擦力がそれを支えることができるかららしい。そんなに小さくなったら、どこかにくっついたらそれでおしまいである。
 こんなに大きくなったら、小さいイカでは整合的であった体の構造が少しも整合的ではなくなってしまうはずである。それなのに、小さいイカの形のままただ大きくなっているように見える。ベイトソンの話は嘘だったのだろうか?
 ダイオウイカの天敵はマッコウクジラらしい。鯨と大きなイカが組んづほぐれつみたいな絵を小さいころ絵本でみたことがあるような気がする。単なる空想なのだろうと思っていたら、本当の話らしい。
 書いているひとがテレビの方面の人なので、深海での撮影の苦心談のほうに話がいくのはやむをえないのであろうが、もう少し、そういった方面のことも詳しく書いてあれば、もっと面白い本になったであろうにと思った。もっとも収載されている数枚の写真だけでも、一見の価値のある本なのであるが。特にその目。