昨日の続き

 
 最近はほとんどテレビは見ないのだが、高校くらいまでは結構みていた。昨日の「ローン・レンジャー」に続いて、少し思い出してみる。
 まず「パパは何でも知っている」。アメリカの中流(上流?)家庭を描いたホームドラマで、内容はまったく覚えていないが、とんでもなく広い家に住んでいたころだけははっきりと記憶にある。戦後のある時期の日本のアメリカへの憧れ(とそれの裏にある憎悪のような感情)はこれらのテレビドラマから造成された部分もあるのではないかと思う。あるときびっくりしたのが、これの「原題」が「Father knows best」であることを知った時で、上手い訳だなあと感心した。「お父さんが一番物知り」ではね。この題名にあらわれているように、「何でも知っている」お父さんと優しいお母さん、それを尊敬する素直な子供たちという絵に描いたようなホームドラマで、今から思うとありえない家庭像であるが、アメリカでもかくあれかし!というので作っていたのであろうか?
 「ソニー号空飛ぶ冒険」。ヘリコブターが活躍する活劇。そのヘリコプターがソニー号というのである。もとのフィルムでは別の名前であったはずで、スポンサーがソニーなのでソニー号。いまだったらそんなことはとても出来ないであろう。テレビ創成期だからこそできたことなのであろう。わたくしがソニーという会社の名前をはじめて知ったのは間違いなくこのテレビ番組によってである。
 「ロー・ハイド」。西部劇。まだ無名時代のクリント・イーストウッドがでていたこと以外はあまり覚えていないのだが、覚えているのが主題歌。当然、英語の歌なのだが、ヘブライ語とかサンスクリット語と言われてもそうかなと思うくらい、当時学校で学んでいた英語と同じ言語とは思えない言葉で歌われていて、「一句もわからずアメリカ語!」という感じなのであった。まだ戦後15年くらいで、外国にいくのは大変な時代で、英語の先生が「君たちは一生英語を話すことなんかありませんから、英語は読めればいいです」といっていたくらいだから、漢文を読むような感覚で英語を学んでいたのである。今はヒアリングが入試にある時代になったのだから、時代は変わった。ということでわたくしはなんとかTOEICを受けずに一生を終わることができそうである。よかった、よかった。
 そのほか、犬がでてくるのがいくつかあったような気がするが、昔から忠犬ハチ公路線は嫌いなのであまりみなかった。
 もう少しいったところでは、「0011 ナポレオン・ソロ」。題名通り「007」のもじり。はじめはよくできた活劇と思っていたら、そのうちにソロ(ロバート・ボーン)の相棒のイリアというのが人気がでてきて(たしか俳優はデイビット・マッカラム)、二人を平等にたてる筋になってつまらなくなり、内容も何だかコメディ路線的になっていった。後年これを思い出したのは橋本治の「ロバート本」と「デビッド100コラム」いうのを読んだときで、もちろんロバート・ボーンとデイビッド・マッカラムのもじり。最初この本が単行本として刊行されたときの値段が1100円、二冊そろって「ナポレオン揃い」(≒「ナポレオン・ソロ」)というのだから橋本さんもモノ好きである。
 今から思うと、テレビをみなくなったきっかけは、團伊玖磨さんの「パイプのけむり」というエッセイのどこかにテレビという電気紙芝居をみてぼんやりとしているひとたちはみんな虚けであるというようなことを書いているのを読んだことで、それならテレビみないでやってみようかなと思ってそうしてみたら、それでも何の痛痒も生じないことがわかって、それ以来はほとんど見なくなった。大宅壮一さんがテレビをみると「一億総白痴化」といったのはいつのことだっただろうか。最近のテレビでの芸能人の悪ふざけをみるとつくづくとその通りと思う。