学会のシンポジウム

今日、学会で、普段ならきかないような話をきいてきた(第100回日本消化器病学会総会「シンポジウム1 消化管幹細胞研究の新たな展望」)。
昨今、幹細胞というのが話題になっていなければきこうとも思わなかったはずである。何しろこちらは予備知識ゼロであるし、演者はそれほど広くはない会場にいる、ほとんどたがいに顔を見知っている同じ方向の研究仲間と互いの研究について議論しているような雰囲気の発表であったので、わたくしにはちんぷんかんぷんの内容で、最近いろいろなところで見る緑色に発色した細胞がいろいろなところにでてくるなというような情けない感想をもっただけであるが、iPS細胞というのがかなり実用に近い(といってもここからが大変なのであろうが)ところまで来ているのかなという印象をもった。それにくらべるとSTAP細胞(現象?)というのは、かりにそれが本当のことであったとしても、実用(臨床応用)ということろまでははるかに遠いはずで、なぜこんなに騒がれているのか、現場にいるひとは不思議に思っているのではないかと感じた。
わたくしは幹細胞というのが仮に肝細胞まで分化できたとしても、それが胆管といった構造とワンセットにならない限り臨床的な意味が乏しいと思っていたのだが(これは現在でもそうであるようだが)、たとえば腸管への分化では粘膜細胞だけでなく、筋肉や神経といったものも同時に分化してくるらしいことをはじめて知ってびっくりした(今時、そんなことに驚いているのは恥ずかしい限りであるが・・)。
それよりも演者が、実に面白そうに発表し、議論している姿がとても印象的だった。何か新しいことがわかってくるワクワク感というのがきいているほうにも伝わってきた。科学という営為とはそういうものなのではないかと思った。
聞き違いでなければ、癌細胞にも幹細胞に相当するものがあるという仮説があるのだそうで、癌にまで分化?したものは抗癌剤によって死滅するが、癌幹細胞は抗癌剤には反応しない。それで生き残った癌幹細胞からふたたび癌がでてくるというようなことがあるのだとすると、癌幹細胞への分子標的薬のようなものができれば画期的な抗癌剤となるはずである。とういうことで、これらの研究は創薬という見地からも宝の山であるようであるので、単なる未知なる事象の探求といったきれいごとだけでは決してないのであろうことは想像されるが・・(臨床の研究というのは、本来、背後に実用を想定しなくてはいけないものであろうが、こういう研究をしていると幹細胞からの分化のメカニズムということのほうがずっと面白く興味深いものに思えてしまうのではないかと思う)。これまた聞き間違いでなければ、幹細胞からの分化ということには細胞のおかれた環境が非常に重要な役割を演じるらしい。STAP細胞というのは、細胞がおかれた環境によってはそれの逆もおこりうるのだという発想なのであろうか?