今日入手した本
- 作者: テリーイーグルトン,大橋洋一,吉岡範武
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2014/05/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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とにかく何かをおちょくる時のイーグルトンの芸というのはたいしたものである。
まんなか辺りに、禁煙運動とか極端な健康志向をからかっている部分がある。
イーグルトンがドーキンスの反=宗教の言動を揶揄するときの手つきは実に鮮やかなものであるが、イーグルトンからみるとドーキンスは反=宗教とはいっているものの、実はその底に清教徒的清潔志向のようなものがあることを敏感に感じとっているのかな、と思う。
禁煙運動に清教徒的なものを感じるひとは多いのではないかと思うが、イーグルトンは科学とそれによる合理主義にも同じものを感じるのであろう。
わたくしは清教徒的なものが嫌いなので、イーグルトンの書くものは(こちらの知識の不足で理解できない場合も多いけれども、それでも)面白い。
そしておそらくイーグルトンのほうがドーキンスよりも、現代における科学の正統的な立ち位置ということについてもよくわかっているように思うけれども、本書でイーグルトンがからかっているのが、やたらと宇宙人に拉致されるアメリカ人であり、ドーキンスが青筋たてて憤っている相手が聖書に書いてある通りに世界が創造されたと信じて疑わないアメリカ人なのであるから、そして、そういうアメリカ人はイーグルトンが何をいってもドーキンスが何をいっても蛙の面になんとかなのであるから、イーグルトンのしていることもドーキンスのしていることも暖簾を腕で押しているようなもので、実効はゼロである。
イーグルトンの本を読むひとも、ドーキンスの本を読むひとも、どちらもアメリカ人のおかしなところについては言われなくてもわかっている人ばかりなのである。
科学はこれからも進歩していくであろうが、それにもかかわらず、世界は(すくなくともアメリカは)中世に帰っていくのではないかという気がしないではない。そして日本にだって、前世とか生まれ変わりとかを信じているひとが少なからずいるのである。