池澤夏樹 個人編集 日本文学全集

 
 今日の朝刊に「池澤夏樹 個人編集 日本文学全集」の宣伝がでていた。すでに刊行された「池澤夏樹 個人編集 世界文学全集」の姉妹版ということらしい。刊行はまだ先の11月。
 全30巻で、12巻までが明治以前、13巻から25巻までが明治以降の作家。26巻〜28巻は「近現代作家集」となっているから、ここには一部明治以前の作家もふくまれるのかもしれない。29巻「近現代詩歌」には明治以前のものがふくまれるのは確実で、訳者の名前が掲げられている。12巻までのものはすべて原典ではなくて、訳で収載されるのである。そして驚いたことに、明治以降では唯一、樋口一葉の「たけくらべ」が訳で収載されるらしい。そうであるなら、明治以降の詩歌でも訳で収載されるものがあるのかもしれない。詩の訳というのはつらいものがあるので、原典と訳との並記かもしれない。
 13巻〜25巻までの明治以降の作家で一人一冊となっているのが、谷崎潤一郎大岡昇平吉田健一大江健三郎中上健次石牟礼道子須賀敦子の7人。漱石・鷗外も一人で一冊はあたえられていない。島崎藤村などどこにも名前がない。評論家が吉田健一ただ一人というのも凄い。小林秀雄河上徹太郎中村光夫もいない(近現代作家集にはあるのかもしれないが)。「南方熊楠柳田國男折口信夫宮本常一」という巻があるが、これは民俗学といった学者の集であろう。
 「堀辰雄福永武彦中村真一郎」などという巻にも反発するひとはいるかもしれないなあと思う。
 須賀敦子が一人一巻というのも凄い。
 個人編集であるから、独断と偏見の所産であるのは当然であるが、ここまでやれると爽快であろうと思う。
 わたくし個人としては、吉田健一の一人一巻が快哉である。
 第30巻は「日本語のために」と題されていて、そこに「日本国憲法前文」なども収められるとされているのは、いかにも池澤さん的でご愛敬である。
 第7巻の「枕草子酒井順子訳、方丈記高橋源一郎訳、徒然草内田樹訳」というのは面白そう。出たら買うかもしれない。