今日入手した本

 

 「倫理学ノート」を読んで以来、清水氏のことが気になっている。といっても後は「現代思想」くらいしか読んでいないのだが・・。
 わたくしは福田恆存から物を考えるほうにはいった人間なので、福田氏から進歩的文化人の典型のようにいわれていた清水氏のことなど読まずに馬鹿にしていた。その後、清水氏が大きく右旋回してからは「現代思想」とか少しは読んだが、何かいつも人を指導していたいひとなのだなというような感想をもつくらいだった。「倫理学ノート」を読んだのがどんなきっかけであったのかもう覚えていないが、そこであつかわれているのがブルームズベリー・グループであったり、ヴィットゲンシュタインであったり、あるいはD・H・ロレンスであったりと、吉田健一ポパー福田恆存路線と関係あるひとであったこともあり非常に面白く読めた。「倫理学ノート」は一言でいうと、功利主義擁護というか、自分には功利主義のどこが悪いのかわからないという主張の本であると思うが、功利主義というのは高級な方面の思想の陣営からは非常に評判が悪い。功利という言葉がすでに浅薄な感じだし、人はパンのみで生きるというのかといった反発をすぐに生んでしまう。高級な方面は心とか思想といった方向で、まあ脳であるとかせいぜい心臓とかである。功利主義というとなんだか身体的な感じで「腹さえくちくなればいいのか」といったことを高級派はすぐに言い出しそうである。
 おそらく清水氏がこだわっているのは「普通の生活」といったものに通じる何かで、高級な方面のひとがいっていることは仙人の戯言のようにきこえるのであろう。
 コントは人類教などという変なことをいったひとという程度の知識しかこちらにはないのだが、それでも清水氏が打ち込んだ人であるのなら何かがあるのかなと思って買ってきた。
 
(日本人)

(日本人)

 表題は「かっこにっぽんじん」と読むらしい。
 この本は2012年に出ているのだが、「あとがき」に「おそらくこれから10年以内に、私たちは大きな社会的・経済的混乱を経験することになるだろう」として、「国家に依存しない経済的に自立した自由な個人だけが、その混乱のなかで・・福音を伝えることができるのだ」となかなかのことを書いている。
 各章の末に数冊づつの文献が付されているが、特にpart 1 の部分では半分くらいの文献が既読であったのがうれしかった。もっともいくら読んでも、散漫な感想を書くだけのわたくしと、その文献をもとに筋道の通った本を書く著者との頭脳の差は歴然なのだが。
 東浩紀氏による「解説」とその中での本書への批判が面白い。