今日入手した本 山本七平 加瀬英明「イスラムの読み方」

 

 本書は昭和54年、つまり1979年、今から35年ほど前に出版された「イスラムの発想 ― アラブ産油国のホンネがわかる本」を再編集して終章に加瀬英明氏による書き下ろしを加えて「イスラムの読み方」として以前刊行された本の復刊で、さらに終章を全面的に書き改めたというものらしい。
 最終章以外は山本氏と加瀬氏の対談なのだが、対談当時の中東情勢を分析した部分を削除したと書かれている。最初の本の副題にもあらわれているように今から35年前にはアラブは産油国としてしか注目されていなかったわけである。わたくしはアメリカにさえ興味がなくヨーロッパにしか関心がないままきた人間なので、イスラムにはまったく関心がないままできた。強いていえば井筒俊彦氏の「意識と本質」とかは読んだが、これはとんでもなく難しい本で、イスラムについて何かわかったという気はまったくしなかったが、マラルメとか西欧の文学者については何かわかった気にさせるという不思議な本だった。小室直樹氏の「日本人のための宗教原論」も読んだが、小室氏は典型的な文明開化の人であるからその宗教論が西欧からの視点の精髄を示したものであるとしても、イスラムの側から見ればいろいろと異論も出るであろう本であると感じた。
 本書はまだいくらも読んではいないが、山本氏の博識に驚く。しかし、おそらく本書は刊行当時はそれほどの関心をひかなかったのではないかと思う。世界は西欧のもので、アラブには石油があるだけと思われているうちはイスラムの理解などどうでもいいことだったわけである。わたくしにしても同様で、いまさらにわか勉強をしても時はすでに遅いのであろうが、とにかくゼロではない状態になるのが第一歩である。