今日入手した本 R・クーパー「精神医学の科学哲学」
- 作者: レイチェル・クーパー,伊勢田哲治,村井俊哉,植野仙経,中尾央,川島啓嗣,菅原裕輝
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2015/06/19
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
題名通りの本のようで、科学哲学という見地から精神医学の問題を論じたもののようである。
まずポパーの「線引き問題」から入り、クーン、ウィトゲンシュタイン、R・D・レイン、フーコーというようにわたくしでも知っている人々の主張を簡潔に紹介してたどりながら、著者の見解を述べていくというオーソドックスな書き方がされている(まだ30ページほどしか読んでいないが)。
ポパーの「線引き」論が現実の場において科学と非科学をわけるものではないという著者の主張はその通りであろうが、ポパーは理想論をいっているのであって、科学と非科学をもし分けうるとすれば「反証」ということがその鍵になるはずであるということを述べているのではないだろうか? いずれにしてもポパーは反証不可能の例として精神分析(フロイトのものより最近はやりのアドラー)を挙げているのだから、精神医学と科学ということを論じる場合にポパーを入り口にするというのはきわめて正当な行き方であろう。
モノとこころ、心身二元論といった問題は永遠に解決されるはずのないものだから、本書での著者の主張はあくまでも著者の主張にとどまるしかないのであろうが、問題の整理という点で、よく出来ているいる本ではないかと思われる。
R・クーパー「DSM−5を診断する」
- 作者: レイチェル・クーパー,植野仙経,村井俊哉
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2015/02/12
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (5件) を見る
しかしいつの間にかDSMは世界を席巻してしまったわけで、産業医として「うつ」とは無関係ではいられない以上、その背景などについても知っていなければいけないという思いがあり、DSM改訂と製薬業界とのかかわりといった問題も論じられているらしい本書を買ってみることにした。
笠原嘉「新・精神科医のノート」
- 作者: 笠原嘉
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2006/12/23
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
中井久夫氏の「「つながり」の精神病理」の解説で、春日武彦氏は、中井氏が「本職患者を作らないということは精神科医の仕事である」といっているのを受けて、「たしかに新型うつ病の患者を扱っていると、「自宅療養を要す」と記された診断書の枚数と薬の量ばかりが増えていって埒が明かず、やがて当人は本職患者のようになっていき、いっぽう医師は困惑と無力感とで「しろうと」のような気分に陥らされていく」と書いている。春日氏のような精神科のプロがそうであるならば、わたくしのような本当のしろうとは完全にお手上げで、相手のほうが精神疾患のプロでこちらはしろうと以下というような気持ちになってしまう。
「新型うつ」というのはどこかで「スチューデント・アパシイ」あるいは「登校拒否」と同じ基盤のうえにあるのではないかと感じるところがあって、「スチューデント・アパシイ」や「職場のメンタルヘルス」などを論じている本書を読んでみることにした。
坂本薫「うつ病の誤解と偏見を斬る」
- 作者: 坂元薫
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 2014/06/12
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (2件) を見る
著者は東京女子医大の神経精神科の教授であるが、趣味として、スキー、シュノーケリング、テニス、早朝ジョギング、ピアノ演奏、チェロ演奏、芋焼酎賞味、冬ソナ鑑賞、全国講演の準備、などと書いてある。付されている写真を見ても、変わった方なのかもしれないが、書いてあることはきわめて真っ当であるように思う。