今日入手した本

荻原魚雷「書生の処世」

書生の処世

書生の処世

 書店で偶然見つけた本で、軽いタッチの読書日録のような感じだが、渡辺京二氏の本の感想があり、吉行淳之介とか天野忠山本周五郎山口瞳、橘冷、山田風太郎といったこちらの読書範囲と重なる名前がいろいろとでていたので買ってみることにした。しりあがり寿の「3・11」直後の感想、「大きな賭けに負けた−。」というのが紹介されていた。「たぶん日本は震災の前から賭けに負け続けていた。それでも「まだいける、まだ大丈夫。いつでも取り返せる」と膨大な借金を重ねる道楽息子のような状態になっていたのではないか」と萩原氏。
 
徳富蘇峰終戦後日記 蘇峰が終戦直後に書いた大東亜戦争論とでもいうべきものらしい。いわゆる日記ではない。
 蘇峰は場合によっては戦争犯罪人とされることもありえた言論人であり「皇室中心主義」者である。わたくしのようにな947年生まれのものにとって、戦前・戦中の「国体」という言葉がもった威力というのはまったく実感できない。それはソ連崩壊後に生まれたものに、戦前・戦中から戦後20年くらいのあいだに「マルクス」あるいは「マルクス主義」という言葉がもっていた後光が実感できないのと同じであろう。
 本書を読んで「国体」という何かが理解できるということはないにしても、敗戦の直後の時流への反時代的な考察としていろいろと考えさせるものをもつ本のようである。
 
熊谷徹「ドイツ人はなぜ、1年に150日休んでも仕事が回るのか」 こちらが産業医という仕事をしている関係上買ってきた本。まだあまり読んでいないが、ドイツの現状が好調なのは1998年〜2005年まで主張だった社会民主党緑の党連立政権のシュレーダーがおこなった経済改革プログラムの成果なのだというのが著者の立場のようである。1990年代、「欧州の病人」といわれていたドイツで、年金引き下げ、健康保険での自己負担の増加など社会民主党らしからぬ政策をした。特に失業保険制度の改革で、低賃金で働くよりも失業保険をもらうほうが得という状態をあらためた。これは失業率を引き下げたが、格差を拡大した。現在メンケル首相の支持率は高いが、それは経済状態がよいためで、その基礎を築いたのはシュレーダーなのだという。彼による労働コストの削減が効果を出してきているのだと。
 ドイツの労働時間が短いのは法律でそれが厳しくしているかららしい。一方、日本では労働基準法は空文化している。ドイツでは二大政党制が機能しているが、日本ではそれがないことが、日本の労働時間が多いままである大きな原因であるというのが著者の主張らしいが、まだ通読していないのであるいは違っているかもしれない。