S・ワインバーグ「科学の発見」 L・ムロデォナウ「人類と科学の400万年史」

科学の発見

科学の発見

 ワインバーグノーベル賞受賞の理論物理学者。「はじめに」で、「西洋を重点的に論じる」とか「過去の方法や理論を、現代の観点から批判する」などと書いている。明らかに反=ポストモダンであり、クーンの「科学革命の構造」など現在の科学哲学の主流に反抗しようとするもののようである。
 はじめて科学哲学といった分野に接したの二十歳のころだから、もうほとんど半世紀前である。村上陽一郎さんから入ったが、なんと面白い学問なのだろうと思ったものである。村上さんの本は書棚に7〜8冊ある。クーンやファイアアーベントの翻訳なども読んだが、結局この分野ではポパーで止まったので、科学哲学のなかではもっとも西洋派の信者でいるわけである。
 まだイオニアあたりを論じている第3章までしか読んでいないが、「ソクラテス以前の自然哲学者には、見かけ上の世界の理解を一段低く見なすという、知的スノビズムの傾向があった」とか「彼らのうちの誰も、自分の理論を実際に確かめようとはしていない」といって、「だから、どうやってそれを知ったのか」という疑問が残るとし、彼らはむしろ詩人とみなされるべきである」としている。「世界は整然としてわずかな数の自然法則で説明できると深く確信する」という「イオニアの魔術」などは信じないわけである。
 21世紀は一方ではモダンに回帰し、もう一方ではオカルトに傾斜するという分裂を深めていくことになるのだろうか?
 
この世界を知るための 人類と科学の400万年史

この世界を知るための 人類と科学の400万年史

 ムロディナウの本は「ユークリッドの窓」や「ホーキング、宇宙のすべてを語る」(これはホーキングの本とみなすべきものだろうが)が面白かったので、上の「科学の発見」と対にすると面白いかと思い買ってきた。80ページあたりでイオニアの「科学」も論じられているようである。