「養老孟司の人生論」

養老孟司の人生論

養老孟司の人生論

 実はこの本は2004年に出版されている「運のつき」を復刊、改題したもの。わたくしは「運のつき」をもっているから買う必要はないのだが、買ってしまった。この本にはちょっとした思い入れがあって、それは本書の多くが氏の「東大紛争」(養老氏の言い方)体験を論じているからである。わたくしは教養学部から医学部に進学した途端にその渦中にほうり込まれることになったわけで、この体験がなければ今の自分とはまったく違った自分になっていただろうと思うので、「東大紛争が私の人生を変えた」といっている本書はわたくしにとっては他人事ではないところがある。だから逆に言えば、一般性のない本で、そういうことに無関係であったひとにはぴんとこない本であるだろうと思う。事実、養老氏の本としてはあまり売れなかったのではないかと思う。第一、「運のつき」などというタイトルでは何が書いてある本かまったく想像ができない。それがいきなり同じ内容のままで「人生論」というのは無茶なような気もするが、本書は「世間」と「個」という問題を論じているものとも言えるので、「人生論」というのもまったく嘘というわけではないのかもしれない。
 橋本治氏の「ぼくたちの近代史」とともに、東大闘争(橋本氏の言い方)を考えるうえで、わたくしにとってはとても大事な本である。
運のつき 死からはじめる逆向き人生論

運のつき 死からはじめる逆向き人生論

ぼくたちの近代史 (河出文庫)

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