ワクチンの打ち手

 最近、コロナワクチンの接種が少し進んできて、打ち手の問題がクローズアップされてきている、
 要するに接種の筋肉注射は医療行為であるから、癌密に資格を有するひとのみが行えるものであるということで、医師・看護師などに限定されるという話である。
 しかし、テレビなどで接種の現場をみたかたはお分かりになるだろうと思うが、これは誰にでも行える単純な行為である。確かに人の体に針を刺すというのを行うのは怖いだろうが、針は細く、長さも短く、打つ方向も一定であり、数十回、模型などで練習すれば、大丈夫なはずである。
 専門家が必要なのは問診、そして万一副反応が出た場合の対応である。
 どうも医師会は、なるべく医者でなければできない行為を残しておきたいらしい。
 大分昔であるが、血圧測定は神聖な医療行為であり、素人が計るなどトンデモないといって救急車で消防隊員が血圧測定するなど断じて許さないなどといっていた時代もあるらしい。今なら機械が血圧を測る。

 医療の世界のIT化が遅れていると言われているが、医師会の一部の老先生は未だにコンピュータが苦手で、メールが使えないというのが現状で、そのためいまだに連絡には公式にはファックスが使われている。
 
 つまり、厚生労働省が直接各病院診療所に直接命令を出すことはできず、いまだに医師会にお願いして、そこから展開されるという体制になっている。

 わたくしが医師会に属していたのは10年前までなので今は変わっているかもしれない。
 なぜ未だに医療行為は細々とは続けているのに、10年前に退会したのかというと、病院長は医師会に入会するのが義務であったからである。院長になるまでは医師会にはまったく関心がなく加入もしていなかった。
 その時の経験では、医師会の先生方はいたって地味で、バッハ会長のような方はひとりもいなかったし、その奥様方もミンクのコートというようなこともなかった。

 おそらく今でも、開業の先生のほとんどは外来だけで病床は持っていない。そしてつい最近まで医科大学の新設に一貫して反対してきた。これは根拠があることで、それをしてこなかった歯科は、歯科医院がふえて、経済的に厳しい状況になっているらしい。
 そして病院ができると患者さんの多くがそちらにいってしまう。

 しかし、平時には経済合理性があった医師会の主張も、非常時には機能しなくなる。現在、その問題点が一斉に露わになってきているわけである。コロナ対応病床を作れといっても、ものだけ作ってもダメで、呼吸器などを問題なく使える人材もそろえなくては機能しない。
 それには少なくとも数年の時間が必要なはずである。
 ワクチンの打ち手は誰がやってもいいと思うが、呼吸器の操作などはそうはいかない。日本は軽症の慢性疾患への対応を中心におこなわれてきたので、そのつけが今まわってきて、あちこちで問題が露呈してきている。しかし、もしコロナの感染が終息すると、またもとに戻ってしまうのではないかと思っている。