人間と人間以外の動物

 今日の朝日新聞朝刊の読書欄にケヴィン・レイランドというひとの「人間性の進化的起源 なぜヒトだけが複雑な文化を創造できたのか」という本が紹介されている。著者は進化生物学者とのことである。人間と人間以外の動物の関係という問題は、これからここでしばらく考えてみたいと思っている「社会生物学論争」の中心問題であるが、学問上の問題としてはすでに半世紀前に「社会生物学」側の勝利という形で決着がついたものと思っていたので、自然科学の側から「人間だけは特別である」とする論が提出されていることに驚いた。
 著者は科学者であるから、実験・先行研究、数理モデルなどを駆使して問題を追及し、「文化」というものを創造できたという点で「人間は特別である」と結論しているらしい。
 宗教というものをもつ動物はおそらく人間だけである。宗教も「文化」の一部であろうが、今までは宗教が人間と人間以外の動物を峻別し、それが人間と人間以外の動物をまったく異なるものであるという誤った認識をわれわれにもたらしたとして、宗教対科学という観点からこの問題にアプローチしていくのが通常のやりかたであったが、本書ではそれをも自然科学のやりかたで説明していくらしい。
 ただこの書評で、著者が進化の頂点に欧米をおいているのが気になるということが言われている。西欧文明の根幹はキリスト教である。キリスト教においては人間と人間以外の動物を峻別する。魂の有無という点において。最後の審判の日に人間以外の動物はどうあつかわれるのだろう。
 人間は特別であるという主張の本ときくとわたくしなどはどうしてもキリスト教を想起してしまう。そういう西欧中心・キリスト教中心の見方を学問的に切り崩していこうとしたのが社会生物学であるとわたくしは思っているので、著者は西欧中心の考えから自由になっていないのかなと想像する。
 しかし読まずにそんなことを言うのはフェアではないし、面白そうな本であることは間違いなさそうであるので、読んでみようかなと思うのだが、五千円近くの価格であるのでいささか躊躇している。
 今、アマゾンでみてみたら長谷川眞理子氏が「文化とは何か、人文・社会系読者にこそ読んで欲しい一冊。」と書いていたし、寿一氏も「文化のメカニズムから進化まで「文化科学」研究の最前線。」としていた。
 両長谷川氏が推薦する本なら絶対に間違いないはずだから、やはり買ってみようか?