本棚の整理

 本というのは背表紙が見えるように配架しないと価値が半減するのだが、本が増えてくるとそうはいっていられなくなる。でかなりの本が背表紙が隠れる状態になっていたのだが、最近本棚を一つ増やすことが出来て、かなりは改善することが出来た。
 新しい本棚に収まったのは、ヴァレリー全集、エリオット全集、フロベール全集、フォースター著作集、福原麟太郎著作集,林達夫著作集、吉田満著作集、吉田満「散華の世代から」、世界大博物学辞典(荒俣宏)、ひらがな日本美術史(橋本治)、美術の物語(ゴンブリッジ)、鴎外選集・漱石全集(いずれも岩波の小型版)、天谷直弘「ノブレス・オブリージュ」、松岡正剛「千夜千冊」、「Ambarvalia西脇順三郎 復刻版 限定千部」、ヴァレリー 中井久夫訳「若きパルク 魅惑」、「小さな家」「緑の家」(エクスナレッジ)などで、全集・著作集は全部はそろっていないものが多い。この中で最近比較的よく参観するのは、フォースター・林達夫のものだろうか?
 久しぶりに「吉田満著作集」のページをめくってみた。下巻巻頭の「戦中派の死生観」。「戦中派は・・・戦争協力者の汚名をそそぐには身を粉にして働くほかはないようにして働き、妻子の愛し方も人生の楽しみかたもろくに知らず、肉体酷使の習性を身につけたまま、五十を幾つも過ぎないのにぽっくり逝ってしまう奴が実に多い。腹立たしいほどに不器用な、馬鹿正直な男たちである。・・」 これは食道静脈瘤破裂で入院した病床で奥さんに口述筆記させたもので、氏の絶筆となった。享年五十六歳。「妻子の愛し方も人生の楽しみかたもろくに知らず」というのは何も戦中派ばかりでなく、少なくともわれわれの世代までの男たちには広く言えることなのではないかと思っている。
 さて、多くの本が出て行ったことで既存の本棚の本もかなり背表紙が見えるようになった。しばらくはそれを眺めて楽しむことになりそうである。それはいいのだが、一番上の段は踏み台に乗らないととれない。それが何だかあぶなっかしい。
 因みに左手の本棚の最上段には西脇順三郎福田恆存河上徹太郎の全集、石川淳「新釈古事記」「狂風記」、中村光夫「戦争まで」、大岡昇平「レイテ戦記」、福原麟太郎「幸福について」などがあるようである。「幸福について」などちょっと読み返したい気がする。ハーディの詩「牛」はそこで紹介されていたように記憶している。