Roald Dahl 「Matilda 」

 [Penguin 1988年初版 ]


 これもダールの子供向けの本。
 親にほとんど無視されているマチルダという天才少女が、図書館の司書のフェルプス夫人、学校の担任のハニー先生などに才能を見出され、とんでもない人間のトランチブル校長とマチルダの両親をやっつける話。
 したがって主人公はマチルダという少女であるはずであるが、本当の主人公はハニー先生であるかもしれず、されにいえばフェルプス夫人やハニー先生がマチルダにもたらす本あるいはそれに代表される文化あるいは優雅ということであるかもしれない。
 とにかくダールの俗悪嫌いは徹底している。いんちきな中古車販売をしているマチルダの父親と、その稼いでくる主人を尊敬していてビンゴ狂いの母親、趣味といえばテレビを見るだけという彼らの生活の描写は、いくら戯画とはいえ徹底している。ダールのテレビ嫌いは相当なもので、「チョコレート工場の秘密」でも、テレビを追放せよという演説があった。(そういえばキングの「小説作法」でも、テレビをみるのをやめなさいという部分があった) 現在存在する最大の「文明の敵」はテレビなのであろう。
 そして、テレビを見ないマチルダ少女が読むのが、ディッケンズ・ブロンテ・オースチン・ヘミングウエイ・フォークナー・スタインベック・グリーン・オーウエルなどなのである。いくらなんでも4歳の少女がフォークナー「響きと怒り」を読むかね、という気はするが・・・。
 4歳の女の子に負けるのは癪だから、今度、ディッケンズの「大いなる遺産」でも読んでみようか?