2023-04-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田健一訳詩集「葡萄酒の色」「ラフォルグ抄」

わたくしが持っている吉田健一の訳詩集「葡萄酒の色」は昭和53年(1978年)刊の小澤書店(発行者長谷川郁夫)刊のものと、2013年刊行の岩波文庫の二冊である。 長谷川郁夫氏の「吉田健一」(新潮社2014)によれば、昭和50年に刊行された「ラ…

ジュール・ラフォルグ「聖母なる月のまねび」

ジュール・ラフォルグは19世紀後半のフランスの象徴派の詩人で、27歳で死んでいる。T・S・エリオットなどに影響を与えたといわれ、日本でも、中原中也、梶井基次郎などが愛読したのだそうである。作品としては、「嘆き節」「聖母なる月のまねび」などが…

塩原俊彦「ウクライナ戦争をどう見るか」(1)

著者の塩原氏は随分多くの著書があるかたのようであるが、こちらの不勉強でまったく存じ上げなかった。新聞の広告でこの本を知った。 昨今の報道では、ウクライナ100%善、ロシア100%悪という論調ばかりが目について、まるで単純な勧善懲悪、いくら何…

ポパー ベイトソン

今日の朝刊にカール・ポパーの「開かれた社会とその敵」とG・ベイトソンの「精神の生態学へ」の広告が出ていた。岩波文庫に所収されたらしい。 「開かれた社会・・」は西欧擁護の本であるから、ウクライナの戦争という現時点を反映しての文庫収載なのかもし…

本棚 (あるいは渡部昇一「知的生活の方法」)

暇なのでよくYouTubeを見ているが、そこでの識者?(昔の言い方では文化人?)がいろいろと見解を述べているのを見ると、その人の背後は書棚であることが多い。意見を述べている本人に焦点があたっていて背後の書棚はぼんやりとしか見えないが、わたくしなど…

長谷川眞理子「進化的人間考」(3)

前回(2)から大分空いてしまったが感想の続き。第11章 三項表象と共同幻想 ヒトは食べていくためにも共同作業が必要。とすると「個体は基本的に一人で食べていく」という仮定を前提とする行動生態学の知見をそのままヒトに当てはめることはできない。 そ…

上橋菜穂子 津田篤太郎 「ほの暗い永久から出でて 生と死を廻る対話」

実はこのお二人ともほんの少し前までまったく存知あげなかった。上橋氏は文化人類学者のようだが、児童文学として有名な方らしい。野間児童文学賞 本屋大賞 日本医療小説大賞 国際アンデルセン賞作家賞などとある。一方、日本文化人類学章受賞ともあるから、…

女性的?

わたくしは大学で2年間初期研修をした後3年目の研修を外の病院でおこない、大学に戻って学位のための研究もどきをおこない、その後また3年目の研修を行った病院に就職し、その後定年までその病院で過ごすといういたって単純な人生をおくったわけだが、その病…

「進化論の現在」シリーズの「女より男の給料が高いわけ」

本棚の奥のほうから「進化論の現在」というシリーズ本がでてきた。ロンドン大学で行われたセミナーを翻訳したもので全部で7冊、翻訳は2002年から4年にかけて刊行されている。 トンデモといわれることもあった竹内久美子さんが翻訳を担当しているが、決…

坂本龍一さん

片山杜秀さんの「片山杜秀の本6 現代政治と現代音楽」(ARTES 2013)の冒頭に「坂本龍一と井上ひさし」という文があり、「坂本は日本を代表する著名な作曲家であるが、誰でも知っているメロディをたくさん作っているかというと・・戦場のメリークリスマ…

長谷川眞理子 「進化的人間考」(2)

第6章 ヒトの食物と人間性の進化 ある生物が何を食べるかは、その生物の進化にとってきわめて重要。例)ガラパゴス島のダーウインフィンチ。 ヒトは昼行性の霊長類だが、昼行性の霊長類の主食は通常は果実や歯葉などの植物である。昆虫も食べるが他の霊長類…

長谷川眞理子「進化的人間考」(1) 少 し前からレイランドというひとの「人間性の進化的起源 なぜヒトだけが複雑な文化を創造できたのか」(勁草書房 2023)という本を読みだしたのだが、何か変だなという感じが強くなってきて中断している。著者は自…