小熊英二「日本社会のしくみ」(2)第一章日本社会の「三つの生き方」

第1章 日本社会の「三つの生き方」 最初に「不安な個人、立ちすくむ国家」という2017年に「経産省若手プロジェクト」が作成した文書が紹介されている。随分と評判になったものらしいが、わたくしは知らなかった。これを知っただけでも、本書を読んだ意…

小熊英二「日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学」(1)

600ページ近い新書としては異例の厚さの本で、正直、非常に読みにくい。「雇用・教育・福祉の歴史社会学」という副題がつけられているが、主に論じられるのは雇用の問題で、新卒一括採用、年功序列、終身雇用といったいわゆる世界から見てかなり特異とさ…

週刊文春の橘玲さんの論

「週刊文春」の最新号での連載「臆病者のための楽しい人生100年計画」の「ロマンス小説の読者が‟欲情”する男性像」で、橘玲氏が、「女には男とは別のポルノがある」という説を紹介している。ハーレクイン・ロマンスなどのロマンス小説がそれにあたるとい…

浅田次郎「日本の「運命」について語ろう」

二時間位、汽車(死語?)に乗る機会があり、そのための読みものとして、駅の書店でもとめたもの。200ページくらいの薄い文庫本である。 随分と大きく構えたタイトルであるが、浅田氏の講演の記録である(ただし文字で読んでも違和感がないように編集され…

本棚の整理(4) 倉橋由美子

倉橋由美子はもう忘れられた作家、今となってはほとんど読む人のいない作家なのではないかと思う。まだ一部、倉橋ファンというのがいるのかもしれないが、それは倉橋初期の「聖少女」あたりのファンであって、わたくしのように後期の倉橋に専ら関心があると…

本棚の整理(3) 三島由紀夫

三島の本もそれほど多くは持っていない。(単行本25冊くらい。短編全集6巻。文庫本10冊で、計40冊くらい。) わたくしが大学2年の時に三島がもう死んでしまったためで、晩年の「豊穣の海」4巻とか、「太陽と鉄」といったものは刊行当時に入手してい…

本棚の整理(2) 福田恆存

福田氏の本はそれほど持っていない。新潮社の評論集7巻、文藝春秋社版の全集8巻、後は単行本(主に戯曲)5冊ほど、文庫本5冊くらいで、併せて25冊ほどである。 福田氏はわたくしが最初に遭遇した思想家で、大学の教養学部時代に読んで圧倒された。ここ…

本棚の整理 (1)吉田健一 補遺

今日、丸の内の丸善で本棚を見ていたら、未見の吉田健一関連の本を二冊みつけた。川本直氏ら編の「吉田健一ふたたび」という本と、青土社刊の吉田健一「時間」である。 「吉田健一ふたたび」は、その「はじめに」で、吉田健一の生前に健一と交流があった篠田…

本棚の整理(1) 吉田健一

最近、小さな書庫を確保することができ、いままであちこちに分散して収納されていた本の一部をようやく一か所に収納できるようになった。といっても、四畳半くらいのスペースの三方に本棚を床から天井まで作り付け、本棚の奥行を25センチくらいにして、収…

加藤典洋さん

加藤典洋さんが亡くなったらしい。先日の橋本治さんのときもそうだったが、新聞をとっていないので、訃報記事などを目にすることもなく、書店で偶然、本のカバーに「追悼〇〇さん」などという帯が巻かれているの見て、それを知ることになることが続いている。…

楠木建「すべては「好き嫌い」から始まる」

著者の楠木さんという方は、今までまったく存じ上げなかった方なのだが、つい最近、偶然、本屋で「戦略読書日記」(ちくま文庫)というのを見つけて面白かったことから、その名を知った。 その「戦略読書日記」という本を本屋で立ち読みしていて、その第12…

橋本治「父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない」(2)

わたくしはE・トッドの著作は「帝国以後」しか読んでいないので、以下、鹿島茂氏のまとめにしたがう。 トッドは世界の家族を4類型に分ける。 1)絶対核家族(イングランド・アメリカ型):結婚した男子は親と同居しない。別居して別の核家族をつくる。親…

橋本治「父権制の崩壊 あるいは指導者はもう来ない」(1)

橋本氏が「小説トリッパー」に2017年秋号から2018年冬季号まで、連載したものの書籍化。おそらく、この後も書き継ぐつもりでいたものが、氏の死により中断されたもののように思う(161ページに「六月の末に癌の摘出手術を受けて入院中とある)。…

橘玲「朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論」(2) 

内田樹さんの2002年の本「「おじさん」的思考」は「日本の正しいおじさん」擁護のための書であることが言われている。そこでは内田氏自身は、どちらかといえば「日本の悪いおじさん」であって《インテリで、リベラルで、勤勉で、公正で、温厚な》「日本…

橘玲「朝日ぎらい よりよい世界のためのリベラル進化論」(1)

橘さんは日本にときどき現れる確信犯的リバタリアンの一人だと思う。わたくしもまたリバタリアニズムに相当親和性のあるほうだと思うのだが、それ一本鎗でいけないのは、たとえば原口統三の「武士は食はねど高楊枝。全く僕はこの諺が好きだつた」などという…

堀井憲一郎「1971年の悪霊」(5)

最終章である第9章の「左翼思想はどこでついていけなくなったか」は著者の堀井氏の個人史を述べたものである。1958年生まれの堀井氏はわたくしより10歳くらい年下であるのでおのずとその経験が異なるわけであるが、まず堀井氏の個人史から。 1970年…

堀井憲一郎「1971年の悪霊」(4)

第8章は「毛沢東「文化大革命」を支持していたころ」と題され、「文化大革命」が論じられる。 わたくしが文化大革命というと思い出すのは、若者たちが自分たちが糾弾する人間に変な帽子を被せて胸に罪状を書いた紙をつけさせて引きまわしている光景と、天安…

堀井憲一郎「1971年の悪霊」(3)

全共闘世代という言葉が現在でもまだ時々使われているので、全共闘運動というものについて、今の若いひとでもなにがしかのことは聞いているのではないかと思うが、「パリ五月革命」についてはどうだろうか? もっともわたくしだってひとのことは言えないので…

堀井憲一郎「1971年の悪霊」(2)

第3章は「1971年、高橋和巳が死んだ5月」と題されている。わたくしは高橋和巳の著書を一冊も読んでいないので、本来、ここを論ずる資格がないのだが、大学時代の友人に高橋和巳信者がいたので、高橋のことをいろいろときかさせてもらっていて、それな…

堀井憲一郎「1971年の悪霊」(1)

堀井氏の名前を最初に知ったのは、どこかの週刊誌(週刊新潮?)で連載していた「ホリイのずんずん調査」?というコラムでだったと思う。何かの話題について私見を述べるのではなく、とにかく調査してみるという姿勢のユニークなコラムだった。 堀井氏の書く…

富田武「歴史としての東大闘争 - ぼくたちが闘ったわけ」

東大医学部の同窓会である鉄門倶楽部の同窓会誌「鉄門だより」では、最近の何号か「東大紛争」についての特集というか、それについてのさまざまなひとの寄稿がのせられている。このことについて論じるときにまず直面する厄介な問題があつかう対象を東大闘争…

橋本治さん追悼

橋本治さんが先月29日に亡くなったらしい。新聞をとっていないので今日まで知らなかった。ネットでも、記事の片隅にでもでていたのだろうか? 近年、血管の炎症性疾患に罹病していたときいているので、それによるものなのだろうか? 氏は1948年3月生…

片山杜秀「音楽放浪記 世界之巻」と三浦雅士氏によるその解説

以前アルテスパブリッシングというところから「音盤考現学」と「音盤博物誌」という題で刊行された本を再編集して「音楽放浪記 日本之巻」「音楽放浪記 世界之巻」の二冊にして文庫化されたものの一冊である。政治思想史を専門とする片山氏にとって音楽関係…

自分にとっての昭和と平成

わたくしは昭和22年生まれであるので、昭和が終わった時には42歳、平成が今年に31年で終わるとそれから30年ちょっとということになる。物心ついてから自分が自身で経験した昭和は36~37年間となるので、ほぼ平成と変わらない年月ということにな…

はてなダイアリーから移行

はてなダイアリーがそろそろおしまいになるということで、はてなブログに移行しました。 まだ勝手がわからず、これからしばらくは、いろいろと修正をしていくことになると思います。 広告がでない設定にしたはずなのにでてくる。なぜかな?

池澤夏樹他「堀田善衛を読む」

集英社新書 2018年 このような本が刊行されたのは今年が堀田氏生誕100年(没後20年)にあたるということのためらしい。わたくしは堀田氏の本は「ゴヤ」しか読んでいない。手許の本の奥付は1977年刊の10刷となっている。30歳の年であるが、…

上野千鶴子「女ぎらい ニッポンのミソジニー」(2)

「世界一「考えさせられる」入試問題」という本が最近文庫化された。オックスフォードとケンブリッジの入学試験での面接問題を紹介し、著者が回答例を付したもので、そこに「フェミニズムは死にましたか?」というケンブリッジ大学古典学での問題も紹介され…

上野千鶴子「女ぎらい ニッポンのミソジニー」(1)

朝日文庫 2018年10月 2010年の刊行された単行本の文庫化で、文庫化に際し2編の文が追加されている。 この本を読んで、どこかで丸谷才一氏が、まだウーマン・リブと呼ばれたりもしていたころのフェミニズムのある集会を評して、観念論に門構えとし…

全共闘運動と『ジャン=ジャック・ルソー問題』

亀山郁夫氏と沼野允義氏の「ロシア革命100年の謎」を論じていたときに、鹿島茂氏の「ドーダの近代史」(単行本)(「ドーダの人、西郷隆盛」(その文庫化))を思い出した。というか本当は逆で、最近文庫化された「ドーダの人、西郷隆盛」を読んでいたら…

亀山郁夫 沼野允義「ロシア革命100年の謎」(4)

第11章「ロシア革命からの100年 ポストモダニズム以後」では1990年以降のことを語るとされているのだが、ここでいきなりポストモダニズムの話がでてくるのがわからない。さらにわからないのがポストモダンという場合のモダンが西欧で20世紀初頭に…