昔 進歩的文化人という人達がいた(2)
わたくしは「進歩的文化人」というのは全てのことに対策があると思っている人たちだと思っている。
誰だったか、「進歩的文化人」というのは、対策をたてれば人間は死ななくなると思っているのではないかと揶揄していた。
人間もまた動物の一種であるはずだが、(私見によればキリスト教の悪影響で)人間だけは一種特別な動物、何だか神様に近い不思議な生き物と思っているひともいて、進歩的文化人という人達はその系列に属するのではないだろうかとわたくしは思っている。
そこで生じるのが「科学」の問題である。
「科学」もまた西欧の産物である。
この「科学」によってほとんどの問題は解決可能であると考える人々があり、その一系列に「進歩的文化人」も属するとわたくしは思っている。
だからこその「科学的社会主義」である。その対語が「空想的社会主義」で、ここで「空想的社会主義」と揶揄されているのは、善意の人が社会を改善していくとするような立場である。
しかし「科学的社会主義」は社会を動かすのは生産力であるとする。生産力が向上するにつれ、その生産力に見合う社会の体制は変化していき、ついには地上に天国が出現する。
いくらなんでもそんな要約は簡単過ぎない?といわれそうで、わたくしもそう思うけれども、社会の根底にあるのは生産力であるというのが進歩的文化人といわれる人々の抱く信念の根底にあるのではないかと思う。
わたくしが若いころ、まだソビエト連邦という国が地上に存在したころ、大陸間弾道弾とか人工衛星とかをソ連が西側に先駆けて実現していた時代があった(1957年ごろ)。わたくしはやはり物質という方面においては社会主義体制というのは西側よりも効率的で優位なのだろうか、と思ったものである。
そのころ進歩的文化人の方々は欣喜雀躍していたのではないかと思う。これを見て社会主義の優位を確信したかたも多かったのではないかと思う。
しかし一方では1968年のチェコ事件といったこともあった。これについて向坂逸郎氏などが随分と苦し紛れな弁護をしていたという記憶がある。
そしてその20年後の1989年にはベルリンの壁が崩壊し、1991年にはソ連という国家が消滅してしまう。
わたくしはそれをみて進歩的文化人のかたがたはどうするのだろうかと思ったが、一部は環境とかエコロジーといった方面に転進?したようであった。
もう一方では「批判」という立ち位置を選択し、体制転覆ではなく体制改善に舵をきったように見えるかたも多くみられた。
わたくしの若いころには進歩派?は大した勢いで、大学紛争(闘争)の最中には、わたくしなど「お前のようなやつは、俺たちが天下をとったら縛り首だ」などと言われたものである。(←これは全共闘運動が華やかだったころの話。わたくしは別に右派というわけではなく、気の弱いノンポリに過ぎなかったと思うのだが、とにかく彼らから見ると自分達より右側にいる人間はすべて敵側ということになるらしかった。)
今では死語だろうが、そのころには「三派」という言葉があって、調べてみると《ブント解体の1961年以降,全学連中央執行部は革共同の学生組織マル学同(日本マルクス主義学生同盟)が握るが,63年4月,革命党の建設優先を主張する革マル派と,大衆闘争重視の中核派に革共同が分裂,64年末まで革マル派が全学連を握った・・》などと書いてあるが、わたくしには、ちんぷんかんぷんである。
そのころ運動をしていた人たちから見ると、日本共産党などはほとんどプチブル政党のように見えたらしいのだが、そういう元気で?過激な?ひとたちが表舞台からは消えた今、進歩的文化人というのは、日本共産党や立憲民主党を支持する人達の一部あたりを指すようになってきているのかもしれない。
要するに日本の現状を肯定しない、それにノンをつきつけるという立場を進歩派というのだと思うが、それでも「自民党など生ぬるい、もっと尊王の旗を高く掲げよ」という人(近々そういう旗じるしのひとが政党を立ち上げるらしい)は進歩派とは言わることはない。
その人たちは、反対する人たちからは退歩派といわれるのだろうが、それでも自身は正統派と思っているのかもしれない。
問題はそういう人たちが(右のひとも左のひとも)実際には政権を担うような展望がまったく見えないことで、とすればひたすら現状にけちをつけるだけの存在になってしまう。
とはいっても、政治にはほとんどの人があまり関心を持たないというのが望ましい状況とわたくしは思っているので、現状はそれほど悪いものではないとも考えている。
《鼓腹撃壌》というのが善政が行われている証拠であるとするならば、現状は可もなく不可もなくの状況なのではないだろうか?(進歩派といわれる人たちは絶対に鼓腹撃壌しない人たちのことであるとわたくしは思っている。《退歩派》だって鼓腹撃壌しているとは思えないが・・)。
「鼓腹撃壌党」といった政党ができないだろうか?