2014-01-01から1年間の記事一覧
ちくま学芸文庫 2014年11月 まったく偶然に書店でみつけたもの。なぜ買ったかといえば、ヒュームに興味があるからで(ルソーには興味がない)、なぜヒュームに興味があるのかといえば、吉田健一の「ヨーロツパの世紀末」で18世紀ヨーロッパの文明人…
この章が最終章で、本書の結論部分である。 1)日本ではうつを「バイオロジカルな疾病」として捉えるのだが、それでもそれが「生物学的還元主義」を必ずしも意味しない。そのことによって、うつについては多様な見方が存在しうる方向が開かれている。 2)…
もともとわたくしがこの方面に否応なしに関心をもたざるをえなくなったのは、数年前から産業医療の分野にかかわることになり、それまで持っていた古典的なうつの知識だけではまったく対応できない状況にすぐに直面することになったからである。 そして本書を…
第5章と第6章はジェンダーの問題をあつかっていて、第5章が男性、第6章が女性を論じている。 うつ病は欧米では長い間「女性の病気」とされてきた。典型的には子どもが巣立った後に感じる空虚感である。ファミニストはうつ病は女性がおかれた社会的状況の…
経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策作者: デヴィッドスタックラー,サンジェイバス,橘明美,臼井美子出版社/メーカー: 草思社発売日: 2014/10/15メディア: 単行本この商品を含むブログ (27件) を見る 新聞で紹介されていた本。 経済危機に陥っ…
20世紀北米では精神分析がさかんで、うつ病の治療も精神分析によるものが主流であった。身体は精神によってコントロールされるべきと考えられてきた。しかし1993年長年抑鬱になやみ精神療法で改善していなかった人々がプロザック(SSRI)をのむこ…
第2章「気のやまい」 日本では西欧精神医学の渡来とともにうつ病が登場したといわれる。それ以前には、西欧と違い、憂鬱感は「自然なこと」として、むしろそこにある種の美意識が日本にあったからというような説明がされる。しかし北中氏は前近代の日本では…
いまピケティの「21世紀の資本」を少しづつ読んでいるのだが(まだ第2章あたり)、「アゴラ」に池田信夫さんの『ヨーロッパ左翼思想の到達点ー「21世紀の資本」』という文がアップされていた。 そこにこんなところがあった。「ヨーロッパの左翼は、英米…
中央公論社 1996年 「21世紀の資本」などという本を買ってきたためか、何となく20世紀を論じた本が気になって、橋本治さんの「二十世紀」とか何冊か本棚から取り出してぱらぱらと見てみた。この本は1996年の刊行で、買った当時一部は読んだ記憶…
西洋においては、その宗教の伝統により、自殺は重大な罪であった。その中において自殺を脳の異常によるとする精神医学による「医療化」はある種の救済をもたらした。 一方、日本では、自殺は「死の作法」あるいは「意志的行為」として賞賛の対象にすらなった…
21世紀の資本作者: トマ・ピケティ,山形浩生,守岡桜,森本正史出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2014/12/06メディア: 単行本この商品を含むブログ (127件) を見る 今日、東京駅の丸善にいったら本書が山積みにされていた。いろいろなところで評判になって…
日本評論社 2014年9月 著者は医療人類専攻のひと。医療人類学は「病や死、苦しみに関する文化を考察する学問」ということらしい。病気というものは、医学の見地からみれば世界に普遍的なものであるはずで、その治療法についてもどこでも共通のものがあ…
ダイヤモンド社 2004年 この本は2004年刊行だが、当時は買ったまま結局読まずにいて、そのまま本棚で眠っていた。思い出したのは橘玲氏の「(日本人)」で本書について言及されていたためで、それで読んでみることにした。 「(日本人)」で橘氏がニ…
今月号の「新潮45」に古市憲寿という方の『「ウェヴ2.0」はどこに消えた?』という文が載っていた。10年ほど前に一時話題になった「ウェヴ2.0」についての論である。 2006年のベストセラー梅田望夫氏の『ウェヴ進化論』で、氏はウェヴ上に多く…
安永浩セレクション作者: 内海健,安永浩出版社/メーカー: ライフメディコム発売日: 2014/10/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る 北中淳子氏の「うつの医療人類学」を読んで、内因性と反応性のメンタル不調の違いというようなことを少し考…
うつの医療人類学作者: 北中淳子出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2014/09/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る 朝日新聞の読書欄で紹介されていた本。 産業医療という分野に少しかかわるようになり、仕事をしているひとのメンタル不調の問題が…
第3部は「ユートピア」と題されていて、「「大いなる停滞」の時代」「ハシズムとネオリベ」「電脳空間の評判経済」「自由のユートピアへ」の4章からなる。「ハシムズとネオリベ」の章は本書としては例外的に原理論ではなく、現実政治を論じている部分で、…
第2部「グローバル」の最後にある「ぼくたちの失敗・政治編」と「ぼくたちの失敗・経済編」をみていく。 「日本をどうすべきか」には現在さまざまな見解があるが、「なぜこうなってしまったか」については大凡の合意が得られている、と橘氏はする。 国家の…
宮台教授の就活原論 (ちくま文庫)作者: 宮台真司出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2014/09/10メディア: 文庫この商品を含むブログ (5件) を見る 宮台氏はたしか本職?は社会学者であったと思う。 こういう本を買ってきたのは産業医という仕事をしていて、最…
英会話不要論 (文春新書)作者: 行方昭夫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2014/10/20メディア: 単行本この商品を含むブログ (5件) を見る 英語は喋れればいいので、読んだり書いたりなど不要であるという最近の多数の論に対して、読んだり書いたりもできな…
第二部「グローバル」の後半の「原発事故と皇太子狙撃事件」と「フクシマの空虚な中心 」の2章をみていく。 「原発事故・・」は太平洋戦争の戦争責任の問題からはじまる。終戦直後、戦争責任の問題には2つの方向があった。一つは「一億総懺悔」論でみんな…
失われた近代を求めてIII 明治二十年代の作家達 (失われた近代を求めて 3)作者: 橋本治出版社/メーカー: 朝日新聞出版発売日: 2014/10/07メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る わたくしは橋本治さんは近世の人であると思っているのだけれど、…
日本人がノーベル賞をとったと沸いている。日本人はノーベル賞好きなのだそうだけれども、こういう騒ぎは世界中どこでも見られるのだろうか? わたくしはノーベル賞自体には関心がないけれども、受賞者の一人の中村氏が、「日本には研究の自由がない」という…
吉田健一作者: 長谷川郁夫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/09/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (29件) を見る 長谷川郁夫氏が断続的に「新潮」に連載していたものなので、半分位は「新潮」掲載時に読んでいるが、単行本になった機会に入手する…
「肌色」の憂鬱 - 近代日本の人種体験 (中公叢書)作者: 眞嶋亜有出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2014/07/09メディア: 単行本この商品を含むブログ (10件) を見る 最近いろいろなところで取りあげられているようなので、読んでみようかと思って。 この…
橘氏のこの本をあちこちつまみ食いして論じているが、今回は(1)で論じた「グローバル」前半に続いて、第2部「グローバル」の真ん中にある「「正義」をめぐる哲学」と「アメリカニズムとは何か?」の2章をみていく。 まず、おそらく藤井直敬氏の「つなが…
最近、山本七平氏の本を読み返しているが、それで本棚をみていたら奥からこの本がでてきた。1992年12月の出版だが、わたくしのもっているのは1993年の1月の第3刷である。今から約20年前の本。 谷沢氏というひとはわたくしには今一つよくわから…
「ある異常体験者の偏見」は昭和48年から49年にかけて「文藝春秋」に連載されたものが昭和49年(1974年)5月に文藝春秋社から出版されている。 「私の中の日本軍」は「諸君」に連載されたものらしいが本書中にはいつからいつまでの連載という記載…
最近、勝手に「朝日新聞問題ウォッチャー」をしていたので、昨日の朝日新聞の会見はとても興味深かった。ちょっと「団交」というのを思い出した。 わたくしは戦後2年目に生まれで、中学に入ったときに60年安保、大学に入ったときに「1968年」があり、…
証言その時々 (講談社学術文庫)作者: 大岡昇平出版社/メーカー: 講談社発売日: 2014/08/12メディア: 文庫この商品を含むブログ (3件) を見る 大岡氏が戦争に関して書いた文を集めた本(1987年刊)を文庫化したもの。 これを購入する気になったのは、最近…