今日入手した本

21世紀の資本

21世紀の資本

 今日、東京駅の丸善にいったら本書が山積みにされていた。いろいろなところで評判になっている本らしい。
 いづれ買うことなるのだろうなと思い買ってしまった。
 まだ「はじめに」を読んだだけだが、とてもわかりやすく書かれた本のようである。理解されるように書きたいという姿勢がはっきりでていて気持ちがいい。
 経済学に属する本のようであるが、クルーグマンのいうギリシャ文字式のあちらの世界に飛んでる数式が一切ないばかりか、数式といっても簡単なかけ算と割り算程度しかでてこないようであるのがうれしい。
 極めて謙虚な姿勢で、自分の主張はあくまでも仮説であり、決してここで書かれた予想がその通りになるといっているわけではないことが強調されている。クルーグマンの自分以外はみんな馬鹿といった書き方と対照的である。
 現在、問題になっている格差の拡大は資本制のメカニズムに深く根付いているので、それを抑制するのは容易なことではないことを述べたものらしい。それを抑制しようとするならば、それがおきてくるメカニズムをまず明らかにしなくてはいけないということで、かつてないほどの膨大な資料を用いて歴史を分析しているらしい。(「r>g 資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す」と帯にある。)
 20世紀のある時期に見られた格差の縮小は2度の世界大戦に主として起因しているというのが著者の分析から得られる結論らしい。わたくしなどは社会主義圏の成立という資本主義圏に対立する勢力が成立したことが大きいのだとばかり思っていた。そのように従来からの定説をくつがえすような論がいろいろ提示されていて、それで評判になっているということのようである。
 日本の翻訳書には珍しく「訳者解説」のような部分がない。「はじめに」が十分その役割を果たしているということなのかもしれないが、「クルーグマン教授の経済入門」の「飛んでいる」訳文と「あとがきと解説とか、そんなもの」での訳者山形浩生氏の饒舌な演説とくらべると、同じ山形氏が本書の翻訳にもかかわっているのを見てちょっと不思議な感じがする。それくらい平明な訳文である。原著それぞれの雰囲気がまったく違うというなのだろうか?
 帯の裏では「本年で、いや、この10年で、最も重要な経済学書にあるといっても過言ではない。」とクルーグマン教授が推薦している。