2003-01-01から1年間の記事一覧

 小倉千加子 「結婚の条件 朝日新聞社」

2003年11月30日初版 小倉千加子はかつて上野千鶴子、富岡多恵子と「男流文学論」という鼎談をやって、男性作家をばったばったとなぎ倒した恐ろしげなフェミニストであったと思う。それで、敬して遠ざけていたのだが、読んでみたら意外とおとなしかっ…

 田中秀臣 安達誠司 「平成大停滞と昭和恐慌 プラクティカル経済学入門」

NHKブックス 2003年8月30日初版 これまたリフレ派による経済論。現在の経済状況を昭和恐慌の時代と比較して考察したもの。 昭和恐慌の時代においても現在とほとんど同様の見解の対立があったことが例示されている。 著者らはリフレ派の立場から、…

 野口旭 「経済学を知らないエコノミストたち」

日本評論社 2002年6月29日 初版 これまたリフレ派による経済論。経済学が現在、信用を失っているのは経済学者が専門家としての役割を自覚していないからであるという。しばしば日本の経済学者は教室で教えていることと相反する提案を政府にしたりする…

 原田泰 「奇妙な経済学を語る人びと エコノミストは信用できるか」

日本経済新聞社 2003年8月25日初版 リフレ派による経済論。経済を論じた部分は大変に説得的なのであるが、人口減少や専業主婦問題を論じた部分などはうなずけない部分もある。たとえば、子どもが生まれないのは子どもを産むコストがかかりすぎるから…

 ポール・クルーグマン 「クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門

2003年11月25日初版 春秋社 クルーグマンが日本経済を論じたいつくかの論文に、訳者の山形浩生が詳細な解説を付したものであるが、その他に、スヴェンソンの短いしかし驚くべき論文が一本収載されている。 クルーグマンの「クルーグマン教授の経済入…

 若田部昌澄 「経済学者たちの闘い エコノミックスの考古学」

東洋経済新報社 2003年2月13日初版 この前にとりあげた鼎談本の著者の一人による経済学史の本であるが、つねに日本の現状との対比がおこなわれている。問題意識がはっきりしており、読後非常に気持ちがいい本である。根底にあるのはアカデミーとして…

 田中秀臣 野口旭 若田部昌澄 「エコノミスト・ミシュラン」

太田出版 2003年11月7日初版 いわゆるリフレ派の三人の経済学者による日本経済をめぐる鼎談と、日本で流布している経済書の批評。もっとも三ツ星とかいう評価をしているわけではない。 この本によれば、現在の日本のデフレ状況を脱出するためには、イ…

 R. Arthur 「The Mystery of the Screeming Clock  The Three Investigators 9 」

Rondom House 1968年初版 英語の勉強。少年探偵団もの。今回は暗号解読がテーマ。怪人20面相みたいな泥棒のほうが問題を解決してしまい、少年探偵達はあまり事件解決に参加しないといういささか苦しい展開になっている。 Zが the の暗号になっているのだ…

梶田昭 「医学の歴史」

講談社学術文庫 2003年9月10日初版 文庫本350ページほどの本であるが、既刊本の文庫化ではなく、文庫で刊行されたものである。著者の急逝により未推敲の未定稿として残されたものを友人が完成させたものらしい。従来ある日本人による医学史の本と…

 Dylan Thomas 「 A Child's Christmas in Wales 」

New Drections 1954年初版? アマゾンでたまたま見つけてとりよせたもの。20ページくらいの版画入りのかわいい本。たぶんクリスマスシーズンの贈り物をあてこんで作られたものではないかと思う。ディラン・トマスが生まれ育ったウエイルズの子ども時代…

 養老孟司 「いちばん大事なこと − 養老教授の環境論」

集英社新書 2003年11月19日 養老氏の本がやたらと出る。あとがきにも書いているように「バカの壁」が売れたので、いままで約束した本の完成をやたらと催促されるためらしい。 本書によれば、養老氏の本業は虫取りである。それなのに虫がどんどんと消…

 河合隼雄 中沢新一 「仏教が好き!」

朝日新聞社 2003年8月30日 初版 わたくしは宗教とはまったく縁なき衆生であって、かって来世などというものを一度たりとも信じたことがない。確か高校の初学年のころに、はじめてプラトンのイデア説を知ったとき、なんとバカげた説であろうかと思った…

 J・メイナード=スミス 「生物は体の形を自分で決める」

新潮社 2002年10月20日 前と同じく「進化論の現在」シリーズの一冊。発生学と遺伝学の関連を扱った本であるが、その内容自体は専門的でよく理解できないところが多かった。ここでとりあげるのは、その最終章の、本論とはあまり関係のない「還元論者…

 C・タッジ 「農業は人類の原罪である」

新潮社 2002年10月20日初版 以前にも2冊ほどとりあげたことのある「シリーズ『進化論の現在』」の一冊。原題は「ネアンデルタール人 ならずもの 農民」。 定説によれば農業は約一万年前に中東ではじまったとされるが、いったん人類が農業の利点に気…

 養老孟司 「まともな人」

中公新書 2003年10月25日初版 「中央公論」に連載している「鎌倉傘張り日記」の既掲載文を本にしたもの。 養老氏は「虫採り」が道楽で、虫を貼り付けるための紙を自宅で切っていると、奥さんが「まるで傘張り浪人ね」といったというのが題名の由来で…

 小谷野敦 「聖母のいない国」

青土社 2002年5月25日 初版 アメリカ小説の評論集であるが、本書を買う気になったのは目次に「風とともに去りぬ」があったからである。「風とともに去りぬ」のような大衆小説が評論の対象として取り上げれることはまずない。それで小谷野さんがどのよ…

 松本健一 「丸山真男 八・一五革命伝説」

河出書房新社 2003年7月20日初版 丸山真男が戦後思想のカリスマたりえたのは、昭和20年8月15日に日本の無血革命があったという説を提示したことによるというのが本書の柱である。8月15日に天皇主権から主権在民へと革命がおきたというのであ…

 田原総一朗 「日本の戦後 上 私たちは間違っていたか」

講談社 2003年9月26日初版 よくいえば正直な本。悪くいえば、よくこんな本を恥ずかしげもなく出版したなという本。 氏は1934年生まれだから、わたくしより一世代以上上の人である。 その氏が、戦後の日本についてどのように感じてきたかというこ…

 荒川洋治 「忘れられる過去」

みすず書房 2003年7月25日初版 たとえば「文学は実学である」という見開き二頁ほどの短い文。 その書き出し。「この世をふかく、ゆたかに生きたい。そんな望みをもつ人になりかわって、才覚に恵まれた人が鮮やかな文や鋭いことばを駆使して、ほんとう…

 茂木健一郎 「意識とはなにか −−<私>を生成する脳」

ちくま新書 2003年10月10日初版 クオリアqualia について論じたものである。 クオリアは「質」を意味するラテン語で、最近の脳科学における最重要論点の一つであるらしい。ラマチャンドランの名著「脳のなかの幽霊」の最終章「火星人は赤を見るか」…

 福田和也 「悪の読書術」

講談社現代新書 2003年10月20日初版 「成熟した大人になるには、読むべき本と読んだら恥ずかしい本がある」と表紙にある。これを氏は<社交としての読書>というのだが、要するに他人との付き合い、会話の中で、どのような本は話題にしてもよく、ど…

 倉橋由美子 「老人のための残酷童話]

講談社 2003年9月30日 初版 書き下ろしとある。 倉橋氏は体調がよくないらしく(もともと丈夫でないところにもってきて、ひどい耳鳴がおきているらしい)、長編を書ける状態ではないらしい。それで最近でる本は「大人のための残酷童話」「倉橋由美子…

野村進 「救急精神病棟」

講談社 2003年10月1日 初版 本屋で偶然、手にとった本であるが、ぱらぱらとみていたら千葉県精神科医療センタをあつかった本らしいので買ってきた。数年前に読んで面白かった「脳と人間」の著者である計見一雄氏がそのセンタ長であったような気がした…

 夏樹静子 「心療内科を訪ねて−−心が痛み、心が治す」

新潮社 2003年8月15日初版 著者の夏樹氏はミステリ作家であるが、かつて重症の腰痛に悩まされたことがあり、それが心療内科で治癒したという履歴をもつ。その氏がさまざまな心療内科患者にインタヴューして書いた本である。 氏は約3年にわたってほと…

 斎藤環 「心理学化するする社会 なぜ、トラウマと癒しが求められるのか」

PHP 2003年10月16日初版 精神科医斎藤環氏の本。斎藤氏は「ひここもり」などについていろいろと論じている人らしい。 何がいいたいのか、よくわからない本である。斎藤氏には非常に失礼ないいかたになるが、保身のための本、自己弁護のための本、…

 内田樹 鈴木晶 「大人は愉しい メル友おじさん交換日記」

冬弓社 2002年6月25日 初版 内田氏と鈴木氏がインターネット上で、公開しながら意見交換した日記を本にしたものである。 内田氏も鈴木氏もプライベートな日記はつけたことがなかったのに、インターネット上での公開日記ならいくらでも書けるようにな…

 日下公人 養老孟司 「バカの壁をぶち壊せ! 正しい頭の使い方」

ビジネス社 2003年10月1日初版 この二人による放談集。もう勝手なことをいっている感じ。日下氏が巻頭で「ここで批判した対象にはそれぞれの事情があることは二人とも知っているから、本気ではあるが、それほど本気でもない対談となった」というよう…

 笠原和夫 「映画はやくざなり」

新潮社 2003年6月25日 初版 東映やくざ映画の脚本を多数書いた笠原氏の映画論。笠原氏は東映時代劇、美空ひばりの映画などの脚本を書いたあと、ひょんなことからやくざ映画の脚本を書くようになったらしい。ここに書かれているのは、やくざ映画にかか…

 片岡義男 「文房具を買いに」

東京書籍 2003年8月13日初版 さまざまな文房具を材料にした写真集(文章つき)といった本。 わたくしも、かつては文房具に凝っていた時期があり、銀座の伊東屋にかよっていたことがあるから、こういう本で写真を見ているだけでもとても楽しい。 文房…

 レオポール・シュヴォ 「年を歴た鰐の話」

文藝春秋社 2003年9月15日 初版 シュヴォ作というより山本夏彦訳ということで買った本。おそらく売り出す側も山本氏の訳ということを最大のセールス・ポイントにしているであろう。山本夏彦氏の本を読んでいると、ときどき、今は絶版の本として、この…