野口旭 「経済学を知らないエコノミストたち」

   日本評論社 2002年6月29日 初版

 
 これまたリフレ派による経済論。経済学が現在、信用を失っているのは経済学者が専門家としての役割を自覚していないからであるという。しばしば日本の経済学者は教室で教えていることと相反する提案を政府にしたりするのだという。
 経済学では、あることを実現しようとすればあるものを犠牲にせざるをえないという経済学に当然の前提がある。たとえば、為替の安定と自律した金融政策と自由な資本移動はその内の二つを選択すると自動的に三つ目の自由度がなくなる。しかし、こういう自明なことさえわきまえないで議論している自称経済専門家がたくさんいるのだという。それが経済学者の信用を失墜させている。専門家としてそれがたとえ世間常識に反することであったも、もっとそれを主張せねばならないという。
 自分は日本のどのような現実を見て、どのように見解を変えてきたかということがきちんと記載してある点で好印象をあたえる本である。どうもリフレ派のほうに本物がいるのかなという気がする。