原田泰 「奇妙な経済学を語る人びと エコノミストは信用できるか」

   日本経済新聞社 2003年8月25日初版


 リフレ派による経済論。経済を論じた部分は大変に説得的なのであるが、人口減少や専業主婦問題を論じた部分などはうなずけない部分もある。たとえば、子どもが生まれないのは子どもを産むコストがかかりすぎるからであるであるという。日本では子どもを産むためには女性は職から離れなければいけないことが多い。それによるその人の経済損失は膨大なものとなる。そのことによって日本人は子どもを産まなくなっているのだから、子どもを産んでも職を離れなくてもいい制度を作れば、少子化傾向に歯止めをかけられるという。本当だろうか? 女性は可能ならずっと仕事を続けたいと思っているというのが著者の前提であるが、本当だろうか? なるべく働かないで専業主婦にというのが女性の多数意見であり、その専業化を可能にしてくれる男がそれほどいないというのが、結婚しない一番の理由なのではないだろうか?
 専業主婦という形態は日本の伝統的な家族形態ではないという著者の主張はその通りであろう。これから専業主婦という形態は男子の収入からいってもなりたたなくなるというのも本当であろう。しかし経済学者が専業主婦というのはリスキィな存在なのだということを啓蒙しているのをあまりみたことがない。フリーターについては結構そういう努力がなされていることを考えると不思議である。
 とはいうものの中国脅威論、地方経済論など説得的であった。
 リフレ派のほうに人材が多いという気がする。