2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

荒川洋治 「文庫の読書」

荒川氏が1992年から2022年までに書いた62冊の文庫についての書評・エッセイ・巻末解説を収めたもの。中公文庫の文庫オリジナルであり、本年4月25日刊であるから刊行間もない本である。 このうちどのくらい自分が読んでいるかなという興味で入手…

西洋だけにあるもの?

You tube でカラヤンが振っているヴェルディのレクイエムの「怒りの日」を見て(聴いて)、これは日本にはまったくないものではないかと感じた。Dies iræ, dies illa solvet sæclum in favilla: teste David cum Sibylla Quantus tremor est futurus, quando…

科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純

偶然古書店で見つけて買ってきた。西尾成子「科学ジャーナリズムの先駆者 評伝 石原純」(2011 岩波書店)。 石原純は理論物理学者であるとともに歌人としても有名であり、また現在ではおそらく原阿佐緒という女性との恋愛事件で歴史に名を留めているの…

柴田翔「されどわれらが日々―」

書棚の奥から昔の本がいろいろとでてくる中で、柴田翔「されどわれらが日々―」が出て来た(藝春秋新社 初版1964年 定価340円)。わたくしが持っているのは1965年刊の11版。高校2年位に読んでいるようである。64年上期の芥川賞受賞作。 当時…

「優雅な怠惰」と「晴朗な精神」

本棚を整理していたら奥から小野寺健氏の「E.M.フォースターの姿勢」(みすず書房 2001年)が出て来た。その「あとがき」に、「優雅な怠惰」と「晴朗な精神」という言葉が出てくる。これこそが「真の教養人」であるフォースターをつかむキーワードとし…

本棚の整理

本というのは背表紙が見えるように配架しないと価値が半減するのだが、本が増えてくるとそうはいっていられなくなる。でかなりの本が背表紙が隠れる状態になっていたのだが、最近本棚を一つ増やすことが出来て、かなりは改善することが出来た。 新しい本棚に…

長谷川眞理子「進化的人間考」(6) 第18章「進化心理学・人間行動生態学の誕生と展望」

最終章である。まず進化心理学の概説。これは20世紀の後半に始まった学問分野であり、たかだか30年余の歴史しかまだない。そのため多くのひとには馴染みがない学問分野であろう。 これはヒトの心理学に進化生物学を取り込むことにより、心理学に新たな風を…

昨日の記事への補足

昨日「わたくしは自分がご主人より先に死ぬと思っている奥様をみたことがない。」と書いたが、これはもちろんご夫婦ともに健康あるいは高血圧・糖尿病・脂質異常症といった慢性疾患はあっても日常の生活は特に問題なく送れているご夫婦の場会であって、どち…

新型コロナウイルス感染症の感染症法上の分類が5類に引き下げの日の東大病院

わたくしは今東大病院に通院しているが、たまたま本日が定期通院日で受診の日だった。それで病院のアナウンスを聴いていたら「本日から5類への移行のため従来行っていた入院患者様への面会制限を撤廃し、入院患者様への面会は午後2時から午後7時まで二名…

長谷川眞理子「進化的人間考」(5)第14章「ヒトの適応進化環境と現代人の健康」 第15章「ヒトの適応進化環境と社会のあり方」 第16章「言語と文化」 第17章「人間の統合的理解の行方」

直立二足歩行する人類は600~700万年前に出現した。さらに20万年の間にホモ・サピエンスに進化した。 「適応進化環境」という概念がある。 先進国の食生活の問題は砂糖・塩・脂肪の摂りすぎである。これらはみなヒトの生存に不可欠なものであるが、…

長谷川眞理子 「進化的人間考」(4) 第13章「人はなぜ罪を犯すのか - 進化生物学から見た競争下での行動戦略」

ちょっとこの章のタイトルは厳しいのではないかと思う。人間以外の動物が「罪」を犯すとは思えないからである。 1970年代半ばにでたE・O・ウイルソンの「社会生物学」からこの種の問題提起がなされてきたわけであるが、これはダーウインの「種の起源」出…

塩原俊彦「ウクライナ戦争をどうみるか」(2)

BBCが2014年春のウクライナを報道した「ニュースナイト:新しいウクライナにおけるネオナチの脅威」という番組がある。これをみれば少なくとも2014年の段階において「ネオナチ」といわれるようなものがウクライナに存在していたことがわかる。プーチ…