昨日の記事への補足

  昨日「わたくしは自分がご主人より先に死ぬと思っている奥様をみたことがない。」と書いたが、これはもちろんご夫婦ともに健康あるいは高血圧・糖尿病・脂質異常症といった慢性疾患はあっても日常の生活は特に問題なく送れているご夫婦の場会であって、どちらかが重篤な病気で入院中あるいはその経過観察中といった場合にはそれは当てはまらない。
で、外来での患者さんとの対話がご本人の病状よりもその配偶者の病状についての話に多くの時間を割くようになるようなことが時におきる。
  「どうですか? 特に変わりないですね? じゃあ血圧を。136/86ですね。落ち着いていますからお薬も今のままで3ケ月分。次の外来予約は〇月☓日でいいですか? じゃあお大事に。」 よく3分間診療という悪口をきくが、ここまでは恐らく所要時間は1~2分である。しかし患者さんは来院の往復に要する時間、外来での待ち時間、薬の待ち時間などで半日は潰すことになる。家庭用の血圧計なども普及している現在、高血圧の患者さんには一年分くらいを処方して家庭で自己測定してもらい、何か変わったことがあれば来院してもらいことでもいいように思うのだが、現在の処方は3ケ月が上限になっている。これは医師会の主張でそうなっているときいたことがある。
  それでそのような安定した患者さんであるが配偶者には重篤な病気である場合には患者さんとの対話の大部分の時間がそこに不在な配偶者が罹患している疾患についてのものになることがある。その配偶者が通院しているあるいは入院している病院の主治医は担当している患者さんの病状についてとてもよく懇切丁寧に説明していと思えるのだが、それがどのようなことを意味するのかが十分には伝わってはいないのではないかと感じることが多かった。血液検査がどのように変化したか? CTやMRの画像はどのようになっていたか?は説明されるが、それが何を意味するのか?がうまく伝わっていない。もちろんそんなことは医者にだってしっかりとわかるわけではないのだが、少なくとも患者さんやその家族という素人の方よりは経験的あるいは文献からの知識で少しは正確な予後診断を下せるはずである。にもかかわらずどうもそこがうまくいっていない。
  それが原因で配偶者が重篤な病気である場合、時間の大半がその病気の相談に費やされるようなことが起きる。こちらも話をきいても格段有益な助言がくだせるわけではないのだが、おそらくセカンド・オピニオン的な役割を果たしているのかもしれない。