2013-12-01から1ヶ月間の記事一覧

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(6)終章「医学部の”開国”を」

津田氏は、本書で「日本の医学界において、医学的根拠とは何かという整理が行われず、医学本来の人間を対象とした研究がほとんど行われていないことを示してきた」という。「水俣病や薬害事件などの日本の保健医療領域の数々の大惨事は、数量化の知識をまっ…

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(5) 第4章「専門家とは何か」

ある大学医学部の研究室で、教授が医学生に対して「いまどき分子メカニズムの研究でないと医学博士が取れない」と発言したという話からはじまる。津田氏は「分子メカニズムの研究でないと医学論文を書けない」などというのは嘘で、「人間の病気についての査…

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(4)第3章「データを読めないエリート医師」

a)福島原発事故 本書で繰り返し批判される100ミリシーベルト以下の被爆では発がんリスクなしとの議論を再度とりあげている。こういう主張をするひとは広島・長崎の疫学調査で100ミリシーベルト以下の被爆のものに有意の発がん率の上昇がみられなかっ…

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(3)第2章「数量化が人類を病気から救った」

a)ジョン・グラント(1620〜1674) 貿易商であるグラントは趣味としてロンドンの地区ごとの出生や死亡を集計し、死因を分析し、週ごとに報告した。それによりペストによる死亡が不規則におきる(他の慢性疾患による死亡は規則性をもっていた)こと…

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(2) 第1章「医学の3つの根拠」

前回の(1)でみた放射線の発がんの閾値の問題で、二年前に読んだ中川恵一氏の「放射線のひみつ」を読み返してみた。100ミリシーベルトの説明として以下のように書いてあった。「人体に影響が生じはじめる(発がんリスクの上昇がわずかに認められる)放…

津田敏秀「医学的根拠とは何か」(1)序章「問われる医学的根拠」

岩波新書 2013年11月 最初の方に、先輩医師にこういう本を書こうと思っているといったところ「おまえ殺されるぞ」と忠告されたと書いてある。冗談まじりとはいえ、とはしているが、確かにその心配はある。村八分くらいにはなりかねない。 要するに日本…

渡辺京二「近代の呪い」(2)第一話「近代と国民国家」

時代区分について:以前は近代は政治ではフランス革命以後、経済では産業革命以後、つまり資本主義社会の成立後とされていたが、ブローデルやウォーラーシュティンらの影響で資本主義の成立が16世紀とされてきたので、近代の定義が文化の面のルネサンスと…

今日入手した本

医学部の大罪 (ディスカヴァー携書)作者: 和田秀樹出版社/メーカー: ディスカヴァー・トゥエンティワン発売日: 2013/11/15メディア: 新書この商品を含むブログ (2件) を見る ざっとしか目を通していないが、日本の医療の現状の批判としては大きくは的を外し…

渡辺京二「近代の呪い」(1)

平凡社新書 2013年10月 とても面白かった。もっとも題名を「近代の光と影」とでもしたほうがいいような気がしないでもない。本書で渡辺氏が論じているのはほとんどが近代の影の部分なのだが、近代の光の部分を十分に認識したうえでの議論である。近代…

今日入手した本

日本人はなぜ存在するか (知のトレッキング叢書)作者: 與那覇潤出版社/メーカー: 集英社インターナショナル発売日: 2013/10/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (19件) を見る まだきちっと読んだわけではないが、ざっと読んだ印象ではとても奇妙な本で…

S・ムカジー「病の帝国「がん」に挑む」(2)

葉酸拮抗剤が白血病治療に試験的に投与された1947年前後は医学の歴史の転換点であった。まず抗生物質。ペニシリンは1950年のはじめには量産されるようになっていた。ペニシリンに続き1947年にはクロラムフェニコール、1948年にはテトラサイ…