2011-09-01から1ヶ月間の記事一覧

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(4)

前に続いて、科学哲学にかんする議論の、A)論理実証主義、B)ポパー、に続く、C)クーンである。 C)クーン:著者によれば、クーンが「科学革命の構造」でいおうとしたのは、科学が実際にはどのようにおこなわれているかということであったという。今ま…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(3)

社会構成主義者の言っていることをきくと科学者たちは、その内容が自分の経験とはあまりにかけ離れていることにめまいを感じると著者はいう。しかし、と著者はいう。しかし、それはフェミニストが哲学や社会科学のさまざまに感じる「女性の経験が不当にも軽…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」(2)

科学についての見方には対決の長い歴史がある。プロタゴラスは「人間は万物の尺度である」といった。これは社会構成主義につながる相対主義のスタートである。一方、プラトンはそのような相対主義への対決を自己の課題とした。 科学革命の成功をみて、啓蒙主…

J・R・ブラウン「なぜ科学を語ってすれ違うのか」

みすず書房 2010年11月 副題は「ソーカル事件を超えて」。原題は「Who Rules in Science?」副題が「An Opinionated Guide to the Wars」 「科学を誰が支配するのか」あるいは「科学は誰が支配すべきか」であり「ソーカル事件(サイエンス・ウォーズ)…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」(3)

中央公論社「世界の名著32・ロック・ヒューム」の巻頭にある「イギリス経験論と近代思想」という解説で、大槻春彦氏がヒュームについて書いていることにいろいろと教えられた。 ヒュームは数学が苦手だったのだそうである。「人性論」で数学者や幾何学者に…

今日入手した本

なぜ科学を語ってすれ違うのか――ソーカル事件を超えて作者: ジェームズ・ロバート・ブラウン,青木薫出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/11/20メディア: 単行本 クリック: 40回この商品を含むブログを見る 書店で偶然に見つけた本。著者もまったく知ら…

今日入手した本

耄碌寸前 (大人の本棚)作者: 森於莵,池内紀[解説]出版社/メーカー: みすず書房発売日: 2010/10/16メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (5件) を見る 何だかわたくしのことを言っているようなタイトル。寸前ではなく、ただ中かもし…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」(2)

前のエントリーで述べたように、わたくしはポパーを通して間接的にヒュームを知った人間なので、「プトレマイオスの体系とコペルニクスの体系を惑星の位置を測定することによってその説の優劣を比較できる」とする立場は、有限の観察によって真偽を決定でき…

D・ヒューム「懐疑派」in「道徳・政治・文学論集」

名古屋大学出版会 2011年7月 ヒュームのエッセイ集としての既刊の「市民の国について」には訳出されていない論文として、まず「懐疑派」を読んでみた。訳文で今一つ論旨がわかりにくと思われた部分については Oxford World Classics の 「David Hume Se…

M・ユルスナール「ハドリアヌス帝の回想」

白水社 2001年 これを読んだのは、入院中に読んだ須賀敦子氏の「ミラノ 霧の風景」をきっかけに、「コルシア書店の仲間たち」「トリエステの坂道」「ユルスナールの靴」と読んできて(「ヴェネチアの宿」はスキップして)、その中で「ユルスナールの靴」…