田中秀臣 安達誠司 「平成大停滞と昭和恐慌 プラクティカル経済学入門」
NHKブックス 2003年8月30日初版
これまたリフレ派による経済論。現在の経済状況を昭和恐慌の時代と比較して考察したもの。
昭和恐慌の時代においても現在とほとんど同様の見解の対立があったことが例示されている。
著者らはリフレ派の立場から、昭和恐慌時に高橋是清がおこなった経済政策を支持するのであるが、高橋是清については、昭和恐慌からの離脱をした立役者という見方とともに、後年のインフレを準備した元凶という見方もあるらしい。
経済学というのは理論物理学などとは違って、ある仮定や前提のもとではどういうことが予想されるかということを述べるだけであるから、その当否は実際の歴史の中で確認していくしかない。昭和恐慌は現在の日本の停滞の経済モデルとして適切なものであり、そこでの経験は自分達リフレ派の政策を支持するものであると著者たちはいう。具体的には超金融緩和が唯一可能な停滞脱出策であるという。ここでの著者たちの経済政策の主張はまっとうなものであるように思われるが、一方、日本のサラリーマン社会の分析などは本当かなという気がする部分もある。
どうも具体的な数字がでてきて定量的な議論になる部分には説得力があり、定性的な議論になると信憑性に問題がでるという傾向が、どの経済書にもあるような気がする。