2003-01-01から1年間の記事一覧

 アーサー&エレーヌ・シャピロ 「パワフル・プラセボ 古代の祈祷師から現代の医師まで」

共同医書出版社 2003年5月15日初版 プラセボにつき広く論じたものである。 オスラー卿によれば、人間とは薬を欲しがる動物なのだそうである。 医学の歴史の大部分の時期において、われわれはプラセボ以外の薬をもたなかった。17世紀にヨーロッパに…

 矢幡洋 「危ない精神分析 マインドハッカーたちの詐術」

亜紀書房 2003年8月8日初版 一読、気が重くなる本である。 PTSD(Post Traumatic Stree Distress )外傷後ストレス障害についての本であるが、「あるつらい記憶は抑圧され、本人にとっても思い出せないものになっているが、そのつらいできごとがP…

 仲正昌樹 「「不自由」論 −−「何でも自己決定」の限界」

ちくま新書 2003年9月10日初版 著者については何もしらない。副題に惹かれて買ってきた。医療の世界においては、自己決定の問題はきわめて今日的なものであるからである。しかし、そういう点がとくにとりあげられているわけではなかった。最後のほう…

 渡辺京二 「なぜいま人類史か」

葦書房 1986年10月10日初版 思うところあって、渡辺京二氏の「なぜいま人類史か」を読み返してみた。本書を購読したのが3年前なので、久しぶりに読み返すことになる。 「なぜいま人類史か」「共同体の課題」「外国人が見た幕末維新」「明治維新をめ…

 伊勢田哲治 「擬似科学と科学の哲学」

名古屋大学出版会 2003年1月10日 初版 偶然、本屋でみつけた本。まじめな科学哲学の本であるが、科学哲学への視座として、いわゆる線引き問題−科学と非科学の間にどこに線を引くかという問題−を主として論じており、その例として、擬似科学の問題をと…

 水野肇 「誰も書かなかった日本医師会」

草思社 2003年 8月28日 初版 とりあげるほどのの本ではないかもしれないが・・・。 ここに書かれている武見太郎の像が面白かった。その言、医師会員の三分の一は、医療費の上がることしか考えず、勉強もしない”欲張り村の村長”のような連中である。し…

 小谷野敦 「反=文藝評論 文壇を遠く離れて」

新曜社 2003年6月20日 今時珍しく文学を道徳的にあるいは倫理的に読む試み。違うかな。 最後の「『ノルウェイの森』を徹底批判する −−極私的村上春樹論」から。 「わたしが春樹を容認できない理由は、たった一つ。美人ばかり、あるいは主人公好みの女…

 養老孟司 「養老孟司の<逆さメガネ>」

PHP新書 2003年8月25日初版 本のタイトルが「養老孟司の<逆さメガネ>」である。タイトルに名前が入ってしまうところが凄い。「バカの壁」が売れて超有名人になったということなのだろうか? 「バカの壁」はしゃべったことを本にまとめたと書いて…

 養老孟司 「形を読む 生物の形態をめぐって」

培風館 1986年10月15日初版 「唯脳論」を読んでいたら、これは「形を読む」の続きであると書いてあった。それで17年ぶりに読み返してみた。養老氏にとって「ヒトの見方」につぐ二冊目の単行本であるらしい。養老氏の本の中ではあまり人気がないら…

 村上龍 「2 days 4 girls 」

集英社 2003年8月10日 初版 「2日間で4人の女とセックスする方法」というとんでもない副題がついているが、内容とはほとんど関係がない。 小説であるが、ほとんどストーリーはない。夢の中のような場所である女性を探してさまよう男の回想というの…

 養老孟司 「唯脳論」 (2)

6)脳は脳のことしか知らない デカルトは cogito ergo sum 我思うゆえに我ありといった。これは「私は脳であり、脳は存在する」といったのである。デカルトの時代に脳の知識が十分であれば、そういったはずである。 数学の規則は脳の規則である。ユークリッ…

 養老孟司 「唯脳論」(1)

ちくま学芸文庫 原著は1989年初版 養老氏の「バカの壁」がバカ売れしているらしい。養老氏が以前から言っていたことが書いてあるだけであり、とくに目新しいことがあるわけではないのになぜか急に売れている。ベストセラーというのはそういうものなのか…

 ロルフ・デーゲン「フロイト先生のウソ」 

文春文庫 2003年1月20日 初版 ドイツの科学ジャーナリストが書いた心理学・精神分析学批判の本。まあ批判というような大上段にふりかぶったものではなく、おちょくっているというような色彩のものだが。ということでとくにフロイトだけを批判した本で…

 村上春樹 柴田元幸 「翻訳夜話2 サリンジャー戦記」 

文春新書 2003年7月20日初版 村上春樹と柴田元幸が、サリンジャーの「キャッチャー・イン・ザ・ライ」の翻訳をめぐって議論し、あわせて村上が本来翻訳に付する予定であった解説と柴田の「キャッチャー論」を収載したもの。 前の三浦の本とくらべて、…

\読書備忘録] 三浦雅士「村上春樹と柴田元幸のもうひとつのアメリカ」

新書館 2003年7月11日初版 変な本である。300ページ弱の本の真ん中100ページが三浦氏と柴田元幸の対談。なんだか村上論と柴田論では独立した本は書けないので、合わせ技で一冊の本にし、対談で水増ししたような印象。 最近の日本の若い文学志望…

 A・カミュ 「ペスト」

新潮文庫 1969年初版 これを読み返してみようと思ったのは、内田樹の「ためらいの倫理学」にカミュが言及されていたから。今から40年前、高校一年くらいの時に読んでいるはずなのであるが、何も覚えていないこと恐ろしいくらいである。覚えていたのは…

 養老孟司 奥本大三郎 池田清彦「三人寄れば虫の知恵」

新潮文庫 2001年7月1日初版 原著1997年4月洋泉社初版 昆虫きちがい、虫きちがい3人による鼎談。 話題の中心は多様性である。とにかく虫は種類が多いらしい。虫をいじっていれば、「いろんなものがある」ということは身にしむるらしい。そうなれ…

 L・ムロディナウ「ユークリッドの窓 平行線から超空間にいたる幾何学の物語」

NHK出版 2003年6月25日初版 この手の本は好きでときどき読む。大体パターンはきまっていて、ユークリッドの公理のなかで平行線公理の不純さ(無限をふくむ)を指摘し、その公理を否定した、1)ある線に対してその線のそとにある点を通りその線に…

 ロバート・ケーガン「ネオコンの論理 アメリカ新保守主義の世界戦略」

光文社 2003年5月25日初版 香山リカとの対談で福田和也が現在のアメリカ理解に必須のテキストであるとしていた本。ネオコンというのはネオ・コンサーヴァティヴの略であろうが、現在のアメリカ政権の政策を主導しているひとたちが自分たちのことをネ…

 丸谷才一 「輝く日の宮」

講談社 2003年6月10日初版 丸谷才一の10年ぶりの長編小説。このひと大体10年に一回長編を書くことになっていて、「エホバの顔を避けて」「笹まくら」「たつた一人の反乱」「裏声で歌へ君が代」「女ざかり」に続く6冊目。 たぶん丸谷氏が本当にか…

 村上春樹「少年カフカ」

新潮社 2003年6月10日初版 村上春樹が期間限定でもうけた「海辺のカフカ」のホーム・ページへよせられた質問に村上春樹がこたえたものを収録した本。 とんでもない装丁で、少年向けマンガ雑誌そのものといったものになっている。村上春樹のアイディア…

 内田樹「映画の構造分析 ハリウッド映画で学べる現代思想」

2003年6月15日初版 内田さんは休筆宣言をしたわりにはよく本ををだす。 それで、いつかどこかで聞いたはなしばかりといえば確かにその通りであるが、今回は映画を通した現代思想解読という趣向。現在思想といっても、バルトのテキスト論とラカンによ…

村上龍 「置き去りにされる人びと すべての男は消耗品である。Vol.7 」 

KKベストセラーズ 2003年6月10日 初版 あいかわらず同じことのくりかえしで、日本はさまざまな階層へと分解しつつあり、それは不可避であって、日本をひとくくりにして論じることはできない、という主張である。 たとえば、「痛みをともなう改革」…

 香山リカ+福田和也「「愛国」問答」

中公新書ラクレ 2003年5月10日初版 香山リカと福田和也の愛国心をめぐる対談である。福田はトッドの<アメリカは実は弱い国なんです>論とは正反対の、<アメリカ=リヴァイアサン>論に依拠していて、それはそれで面白いのだが、この本は、香山リカ…

 山田風太郎「戦中派闇市日記」

小学館 2003年6月20日初版 「戦中派虫けら日記」「戦中派不戦日記」「戦中派焼け跡日記」に続く山田風太郎若き日の日記。昭和22年と23年を扱う。 ここにあるのは怒りである。まわりの人々の愚かしさへの怒りであり、敗戦を終戦を言いかえ、拝啓マ…

 内田樹「ためらいの倫理学 戦争・性・物語」

冬弓舎 2001年3月10日 初版 内田氏が連名ではなく単著としてだした最初の本。いくつかの短文をテーマ別に並べたもの。 最初がソンタグ批判。ソンタグの著書については以前論じたことがあるが、そこでの大江健三郎との往復書簡をとりあげている。内田…

 原彬久編 「岸信介証言録」

毎日新聞社 2003年4月20日初版 岸信介氏が84歳の時に原氏とおこなったインタヴューの記録。 自民党の本流といわれる人、特に革新官僚といわれた岸氏などは自由というのが嫌いなのではないか? アダム・スミスやヒューム流の自由主義というのは嫌い…

 E・トッド「帝国以後 アメリカ・システムの崩壊」

藤原書店 2003年4月30日初版 養老孟司氏が毎日新聞の書評で激賞しているのをみて、読んでみた。面白い。目から鱗である。 養老氏も書いていたように、ここに書かれていることは仮説である。 ポパーもいうように常識的にはありえそうもない仮説があり…

 内田樹「私の身体は頭がいい 非中枢的身体論」

新曜社 2003年5月15日 初版 内田氏はフランス思想の研究家であると同時に武道家でもあって、その内田氏の武道論である。 ところでこの題は、橋本治の「「わからない」という方法」(集英社新書)に由来している。正確には「自分の身体は頭がいい」(…

 内田樹「疲れすぎて眠れぬ夜のために」

角川書店 2003年4月30日初版 何か変な表題だが、<疲れすぎて眠れない>なんてことは本来あってはならない変なことなのだから、そういう時に、これを読んで考えなさいということであろうかと思う。 現代は「いくら欲しいものを手に入れても、まだ欲望…