2003-01-01から1年間の記事一覧

 内田樹「女は何に欲望するか?」

径書房 2002年11月12日 初版 とんでもないタイトルの本であるが、フェミニズムについて批判的に論じたとても真面目な本である。このタイトルで、その内容がわかるひとはいないと思う。内田樹氏はそれなりにメジャーになっているからいいが、そうでな…

 大塚英志 「江藤淳と少女フェミニズム的戦後 サブカルチャー文学論序章」

2001年11月10日初版 筑摩書房 去年、丹生谷貴志氏の「家事と城砦」を読んだときに、その一章「肉体の使用法」に「文学界」連載の大塚英志「サブ・カルチャー文学論」の第六回として「庄司薫とサブ・カルチャー文学の起源」というのが紹介されていて…

 吉本ばなな「キッチン」

角川文庫 原著1991年? 大塚英志氏が、天性の物語作家であると激賞しているので読んでみた。 いままで吉本ばななの本は一冊も読んでいない。なんだか若い女の子に人気がある小説家というのに偏見があって、手にとったことがなかった。 それで・・・。 な…

 大塚英志「物語の体操 みるみる小説が書ける6つのレッスン」「キャラクター小説の作り方」

朝日文庫 2003年4月30日初版 2000年12月 朝日新聞社より単行本初版 講談社現代新書 2003年2月20日初版 小説家の小説を書く技術は、どこまでが小説家に特権的な部分で、どこまでは素人にも共有できるかということを論じたもので、いわば…

 佐々木千賀子 「立花隆秘書日記」

ポプラ社 2003年3月 初版 一時期、立花隆の秘書をしていた女性が書いた立花隆観察記。オウム真理教のこととか田中角栄のこととかが書かれているが、一番の眼目は、立花隆が変な人であるということである。 要するに立花隆は<理解したい人>であって、…

 岩井克人「二十一世紀の資本主義論」

筑摩書房 2000年3月3日初版 アダム・スミスは投機の問題については考えなかった。投機とはケインズがいうところの美人投票であるがゆえに、不安定性を避けられない。 マクロ経済学とは「みえざる手」が働かない世界に関する経済学のことをいう。貨幣経…

 福田和也 「第二次世界大戦とは何だったのか? 戦争の世紀とその指導者たち」

筑摩書房 2003年3月25日初版 フランス革命以来のヨーロッパ近代史は第一次世界大戦で完全に切断された。それにくらべれば第二次世界大戦のもつ意味は小さい。日本はほぼ第一次世界大戦に参加しなかった。そのことが日本に決定的な影響をあたえた。日…

 養老孟司「バカの壁」

新潮新書 2003年4月10日初版 「バカの壁」とは、「結局われわれは、自分の脳に入ることしか理解できない」ということなのだそうである。 常識とは雑学のことではない。常識とは「誰がかんがえてもそうでしょ」「人間なら普通こうでしょ」ということを…

 嵐山光三郎「死ぬための教養」

新潮新書 2003年4月10日初版 来世などあるはずないのだから、いまの時代に求めらるのは、自分が死んでいく覚悟と認識であるというわけで、そのために嵐山氏が読んだ本をあげ、感想を記したもの。結構わたくしが読んだことのある本も多く(「笑いと治…

 村上龍「会社人間の死と再生 ダメな会社と心中しないための戦略とは?」

扶桑社 2003年2月10日初版 村上龍の名前になっているが、さまざまな職種の普通の働くひととの対談集。 銀行・ゼネコン・商社・外資系の会社・旅行会社・特殊法人・地方公務員・地方企業・派遣社員・フリーター・脱サラ起業者・倒産経験者などとの対談…

 山口宏「離婚の作法 終りなき男と女の紛争劇」 

PHP新書 2003年3月28日 初版 弁護士が書いた離婚についての本。離婚についての紛争に弁護士としてつきあってきて、馬鹿馬鹿しくてやっていられない!、一体日本はどうなっているのだ!という憤懣と憂国の書。 男は男女関係は「文明の所産」である…

 スティーヴン・キング「ドリームキャッチャー」

新潮文庫 2003年3月1日出版 なんだかキングも衰えたなあという感じがする。傑作「アトランティスのハート」の次に発表された長編小説であるが、その間に九死に一生を得るような交通事故にあっている。その経験は主人公の一人の設定にも反映しているが…

 岩井克人 「資本主義を語る」

ちくま学芸文庫 1997年2月10日初版 原著1994年刊 雑文集+対談。 これを読むと「会社はこれからどうなるのか」での岩井氏の議論は長年の論考の上になりたっているものであることがよくわかる。 アダム・スミスが批判したのは商業資本主義的「重商…

 E・O・ウイルソン「知の挑戦 科学的知性と文化的知性の統合」

角川書店2002年12月20日初版 「社会生物学」で一世を風靡した?ウイルソンの近著。 人間は進化の産物である動物の一つの種であるということには多くの人は異論はないであろうが(とはいっても、アメリカではファンダメンタリストが五万といて、聖書…

L・ストレイチー「ナイティンゲール伝」

岩波文庫1993年初版 原典1918年刊 ストレイチーの「著名なヴィクトリア朝人たち」のなかの一篇。 著者が述べているように、一般大衆がナイチンゲールについて抱いているイメージは、自分を犠牲にした聖女のような女性、悩める人たちを救うために安楽…

岩井克人「会社はこれからどうなるのか」

平凡社 2003年2月23日初版 大変面白い本。最近、こんな面白い本を読んだことがない。頭がよいひとの書いたものを読むと、そこに書かれていることが簡単なことであるように思えることが多いが、この本も話の流れの筋道がきわめてすっきりしているため…

文藝春秋編「わたしの詩歌」

四十六名の人に自分の好きな詩歌を挙げてもらい、それにかんしての短文を付したものである。 ここでは内田樹の「二度と再現できない歌―ワルシャワ労働歌―」のみをとりあげる。 暴虐の雲 光を覆い 敵の嵐は 吹きすさぶ 怯まず進め 我らが友よ 敵の鉄鎖をうち…

ピーター・シンガー「現実的な左翼に進化する」

新潮社 2003年2月25日 初版 新潮社のシリーズ「進化論の現在」の一冊。 マルクスはバクーニンが主張した、<マルクスのいう共産主義体制は結局少数者による支配体制になるだろう>を一笑にふしたが、実際はバクーニンが正しかった。バクーニンのいう…

Roald Dahl 「 Going Solo 」

Puffin 1986 ダールの「Boy」とペアをなす自伝の後半。アフリカに行きたいということからシェル石油に就職し、そこで第二次世界大戦に遭遇し、志願してRAFのパイロットになって参戦する過程が述べられている。 前半のアフリカでの生活も面白…

D.エドモンド&J.エーディナウ「ポパーとウットゲンシュタインとのあいだで交わされた世上名高い10分間の大激論の謎」

筑摩書房 2003年1月23日初版 これは俗に「火かき棒事件」といわれる1946年10月25日ケンブリッジ大学のキングスカレッジでおこなわれたポパーとウットゲンシュタインとのあいだでの論争をあつかったものである、と書いたが、さてこの事件はそ…

Doald Dahl 「 Boy Tales of childhood 」 

Puffin 1984 ダールの自伝の前半(後半は「Going Solo 」)であるが、自伝にかかれるべき自己形成についはほとんどなにも書かれておらず、ほとんどの部分が、子供時代に大人や年長の人間からうけたいじめとひどいしうちについてであるという異様な本である。…

Doald Dahl 「 My Uncle Oswald 」

Penguin 1979 主として児童文学者および大人向け短編作家として知られているダールの多分唯一の大人向けの小説。といってもとんでもない話で、悪漢小説のかたちで書いたポルノのパロディのような趣の作品である。 時代は第一次世界大戦前後のヨーロッパ。2…

ベンジャミン・フルフォード「日本がアルゼンチン・タンゴを踊る日 最後の社会主義国家はいつ崩壊するのか?」

光文社ペーパーバックス 2002年12月10日初版 著者は「フォーブス」というアメリカの経済誌の日本支局長。「フォーブス」という海外誌には掲載されても日本語とはなっていない記事の収載もふくめて、日本を論じたもの。その中には日本ではほとんどメ…

橋本治「人はなぜ「美しい」がわかるのか」

ちくま新書 2002年12月20日初版 とても難しい本である。4章とあとがきからなるが、あとがきに一番重要なことが書いてあるようにも思うし、それぞれの章の関係がつかみにくい。 すこしづつ読んでいってみる。「まえがき」 「分かる」というのは「主…

池田清彦「他人と深く関わらずに生きるには」

新潮社 2002年11月30日初版 池田氏は生物学者であるが、「正しく生きるとはどういうことか」などといった本も書いている不思議なひとである。池田氏は生物学者であると同時に昆虫採集狂でもあるらしい。養老孟司氏もそうだが、昆虫採集をするひとに…

吉本隆明「夏目漱石を読む」

[筑摩書房 2002年11月25日初版] 1990年から1993年にわたっておこなわれた講演を収載したもの。 恥ずかしながら、漱石はほとんど読んでいない。通読したのは「坊ちゃん」「草枕」「こころ」だけで、それも「草枕」「こころ」は高校のとき課…