Roald Dahl 「 Going Solo 」

  Puffin 1986 


 ダールの「Boy」とペアをなす自伝の後半。アフリカに行きたいということからシェル石油に就職し、そこで第二次世界大戦に遭遇し、志願してRAFパイロットになって参戦する過程が述べられている。
 前半のアフリカでの生活も面白いが、後半の戦争場面がはるかに密度が濃い。
 ダールはナチスドイツ・ムッソリーニイタリアと戦うことは当然としているが、イギリス軍の作戦にはきわめて懐疑的である。戦争自体に反対するわけではないが、戦争遂行者の無能、戦略のなさについてはとても厳しい。反戦でもなく反軍でもないために、戦争というものの本来もつ馬鹿馬鹿しさがかえって雄弁に示されている。
 その点で、とても読み応えのある本であるが、それではなぜダールがパイロットという選択をしたのかについては、この本を読んでもまったくわからない。
 そもそもアフリカゆきも原野でライオンやキリンを見てみたいというのが主な動機のようである。何かダールには根本的な人間嫌いあるいは社交嫌いとでもいったものがあって、それがアフリカゆきあるいはパイロットという選択に大きな影響をしているように思えてならない。
 その点どこかダールにはサン=テグジュペリなどと似たところがあるような気がする。テグジュペリも単独の飛行機で中東を飛ぶ生活をしていたはずである。テグジュペリは「永遠の少年」の典型なのだそうである。ダールにもどこかそういうところがあるような気がする。この本の中にママへの手紙がたくさん引用されているのもどこか示唆的である。