村上龍「会社人間の死と再生 ダメな会社と心中しないための戦略とは?」

   扶桑社 2003年2月10日初版


 村上龍の名前になっているが、さまざまな職種の普通の働くひととの対談集。
 銀行・ゼネコン・商社・外資系の会社・旅行会社・特殊法人・地方公務員・地方企業・派遣社員・フリーター・脱サラ起業者・倒産経験者などとの対談。特殊法人にはたらくひとのやる気のなさなどが一番目立つ。
 村上もいうように会社というものが持つ拘束力の強さというものをさまざまな場所で感じる。
 「サザエさん」も「ドラえもん」もお父さんはサラリーマンである。どういう部署で何をしている人か?ではなくサラリーマンなのである。会社員・サラリーマンという身分が厳然と存在したのである。就職という言葉には自分で事業をおこすということは入らない。就職とは会社に入ることである。
 村上はいう。「現在の日本社会では、会社、あるいは終身雇用という幻想から自由な人ほどハッピーな人生を送る」
 過去にあった標準的な終身雇用を前提とした生活モデルは崩れた。それにかわるモデルはない。

 近年村上龍が言い続けてことのくりかえしであり、なにも目新しいことはないが、村上はこういうことをいい続けることで何かが変わると思っているのだろうか? もし何かが変わるとしても、それは何か村上がいったからではなく、ある人が骨身にしみて変わらなければいけないと思う経験をすることによってであろう。ひとは本を読むことによって頭ではなかなか変ることができないのではないかと思うのだが。